国を守るという意味

2011年02月21日 08:03

朝まで生テレビに出演した堀江貴文氏が、「国を守る」という事について異論を発し、集中砲火を浴びました。しかしながら、中国や北朝鮮が、「何の為に日本に攻めてくるのか?何をしに来るのか?かという疑問に答えられた人はいませんでした。


堀江氏の主張について、東浩紀氏は番組中で次のように述べました。(筆者による部分的な書き起こし)

「主権国家と主権国家の話しに全ての政治の問題を還元させて、国境の問題なんとかでやると、すごく単純な問題になるわけですよ。中国の軍事力対日本の軍事力と。でも実際に、仮に中国が沖縄を占領したとしてもですよ、沖縄の人民もですよ、Twitterとか持っている訳ですよ今。そこには世界中から支援も集まるし、当然中国も変な事はできなくなる。そういう意味で言うと、主権国家と主権国家、軍事力対軍事力で、すべてのパワーバランスが決まるような単純な時代ではないという事を堀江さんは言っていると思うんですよ。この認識は基本的には正しいと思います。」

「国民国家のバランスで全部が動くと考えている方が全然楽観的だし、今の状態から合ってなくなってきているんですよ。だからこそ、今回のエジプトでも革命が起きてきている訳じゃない。」

堀江氏の意見には共感するところがあります。中国が日本へ攻めて来る理由は何か?ヘンリー・キッシンジャーは「抑制とは、得られる利益とは釣り合わないリスクを押し付けることによって、相手にある行動方針を取らせないようにする試みである」と述べています。日本に攻めて来て得るものより、それにより失うものの方が大きくなれば、日本を攻撃して併合する合理性は失われます。経済的な観点から見ると、中国の経済は既に日本や米欧の経済と深く繋がっており、その傾向は今後益々増大すると考えられます。(経済が崩壊している北朝鮮は別として)中国が日本に攻めてくる理由は今のところ見当たらない事になります。

その一方で、中国政府は経済的利益だけでなく別の「利益」もかなり重要視しており、経済的損失のリスクを冒しても、台湾や日本を武力で攻撃・併合するかもしれないという意見もあります。昨年の尖閣諸島問題では、中国政府は漁船の船長を取り返す為に、戦略物資であるレアアースの輸出停止という手段を取りました。これには私だけでなく、世界中で多くの人が驚き、中国に対する危機感を持ったのではないでしょうか。中国共産党は鄧小平の政権以来かなり安定しており、改革開放(や軍事力の近代化)など政府による長期の目標達成に実績があります。台湾だけでなく日本の領有が中国の「利益」に含まれているのならば、彼らの用意が整った未来のいつかに、日本が中国に呑み込まれる可能性は(極論とはいえ、今のところ)否定できません。

呑みこむ手段として軍事力を用いると仮定した場合、日中双方の軍事力の差が、中国が引き金を引く重要な要因になるでしょう。日本側の軍事力は自衛隊+米軍が極東へ投入可能な軍事力ですが、肝心の軍事予算は日米ともに減少傾向にあり、軍事力も減少傾向が続くだろうと考えられます。一方で中国の軍事予算は1989年から毎年2桁の伸び率を示しており、長期的な軍備増強の途上にあると考えられます。双方の軍事力を時間軸上で示したのが下記の図です。

軍事力比較曲線

1)現在はAがBより十分に大きく、日米同盟を強化して中国を抑制する事は合理的です。

2)xの時点でAとBの差が縮小すると、日米同盟の効果は小さくなり、日本は中国の圧力に対して危険な状態となります。

3)yの時点以降はAとBの軍事力が逆転し、日米同盟は対中防衛に有効でなくなり、中国が攻めてきたら日本の敗戦はほぼ確実ですし、たとえ負けなかったとしても、激しい市街戦により民間へ甚大な被害がでて、日本の経済は崩壊の危機に直面するかもしれません。

日本には日米安保があり、米国の核ミサイルがあるから、中国が攻めて来る事はできないという意見があります。しかしながらヘンリー・キッシンジャーは、核の傘の同盟国への拡大が必ずしも有効ではない事について、「核兵器と外交政」で述べています。日米同盟における米国の核ミサイルが中国に対して有効に機能しない事は、もと国際情報局長の孫崎亨氏の「日米同盟の正体 迷走する安全保障」でも述べられています。

中国の核ミサイルのいくつかが米本土を目標にしているかぎり、米国の核ミサイルは上図の「y」時点を回避する確実な手段とはいえません。

そこで、中国が日本を呑みこむ為に軍事的圧力をかけ、その結果として戦争が発生しそうになった場合に、日本の政府と国民は究極の選択をする場面が考えられます。すなわち、

4)戦って負けるか
5)戦わずに負けるか

ところで、中国が日本を呑み込んだ場合の統治方法として、下記の2つが考えられます。どちらになるかは、日本政府が上記の4と5のどちらを選ぶかを決める重要な要素でもあります。

6)チベットのように内地扱いで併合する
7)香港のように特別自治区扱いで本土と分離する

これはあくまで私の考えですが、中国が香港と内地の分離を維持しているのは、中国自身の都合が主な理由です。中国政府は政権維持を目的とした社会の治安維持を極めて重要視しています。チベットの独立運動家や天安門の学生デモが厳しく取り締まられ、民主化運動家が迫害されるのもこの理由の為と考えられます。ところが香港人は欧米に準じた民主的文化の中で育ちましたので、大量のそういう人達を内地人と混ぜる事は、中国政府が嫌う社会的混乱を生む可能性が高いと考えられます。

中国政府による日本統治を考えた場合も、香港と同じ問題があります。少なくとも日本人と中国内地人の民主化レベルの「温度差」が、内地人社会に混乱を起こさない程度に縮小するまでの間は、内地人を日本人から分離して統治する事は、中国政府の利益にかなう可能性が高いのです。

さて、暗い話を書いてきましたが、上記の図の「y」を無意味にする方法も考えられます。

8)憲法9条を改正して先制攻撃や敵地攻撃を可能にし、完全な受身の状態を改善する。
9)日本も核武装して独自の核の傘を持つ。
10)中国にとって日本が独立していた方が「利益」が高い状況を作り出す。

第二次大戦前の日本の世論が戦争突入を望んだように、今の日本にとって8と9が極めて困難であっても、中国の軍事的脅威がより現実化した未来では、日本の世論は大きく変わる可能性もあります。10はキッシンジャー氏の(本記事で最初に引用した)理屈の応用ですが、具体的にどんな方法になるのかは見当もつきません。しかしながら、皆でよくよく考える事により、それがどんな方法であるかがみつかるかもしれません。

国を守るとはどういう事なのか。将来のいつかに日本が中国に呑み込まれないようにする為に、どんな対策が必要かを考えて、いまから少しずつでも実行してゆく必要があるのではないかと考えます。

以上

(注)池田さんと議論する中で、最初の文書の内容がいろんな誤解を生み出している事に気がつきました。また、いろいろと書きすぎて主旨に一貫性がなくなっていました。そこでホリエモンの部分を残してほぼ全面的に書き換える事にしました。また、この記事の後に書こうと思っていた内容も記事後半に加えて、結論を見えやすくしました。完成度の低い文章でご迷惑をかけたアゴラ編集部にはお詫びいたします。

(注2)オリジナルの記事はこちらに保管しました。

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