パッケージメデイアの終焉

2011年02月27日 15:10

昨年8月の、HMV渋谷店の閉鎖は衝撃だった。CDの売り上げが右肩下がりである事は承知していたが、若者が最早CDショップに行かない、若者で賑わう渋谷の街が最早HMV渋谷店を必要としないというのは、今更ながらとはいえ考えさせられた。

それ以降、映像再生のDVDはこの先どうなるんだろうという、漠然とした疑問を抱えていたのだが、今回偶然、朝山貴生氏の記事を発見し、パッケージメデイアがネットに飲み込まれていくパラダイムシフトを確信した。

それにしても、3,000以上の店舗を北米に有した、レンタルチェーンのBlockbusterが、Netflixオンラインストリーミングサービスの台頭に敗北し、あっという間に倒産したのは、圧巻である。

同じことが日本でも起こるのだろうか?もし起こるとすれば、日本のメデイア業界に、そして通信キャリアーに一体どの様な変化を及ぼすのだろうか?

先ず、同じ変化は必ず起こると確信している。アメリカ以上に通信ネットワークが発達した日本で、変化が起こらないことを想像することは随分難しい話だ。

第一の理由、は利便性の格段の向上である。店舗に、実際に借りに行く手間が省けるのは勿論であるが、自宅リビングに留まらず所有する大抵の携帯Deviceで視聴可能になるはずである。

観たい作品を探すのに、店舗をうろつき回る必要がなくなるのも大きいと思う。

それから新作映画の場合、経験された方も多いと思うが人気の映画だと在庫がなくて1週間待ちとかありがちだが、デジタル配信だと必ず視聴出来る。

第二の理由は、利用料金の大幅な値引きが期待出来る点だ。DVDの制作、パッケージング、そして店舗での販売管理が不要になり、全てがネット完結するから当然であろう。

次に、メデイア業界や、通信キャリアーはどう変わるのだろうか?

第一の変化は、渋谷からHMVが消えた様に、街からレンタルショップが少しずつ消えて行くのだと思う。

第二の変化は、利用者の生活様式だと推測する。一昔前は、就業時間中は仕事をして、退社すれば電車で帰宅。これが、オン、オフの転換ポイントで帰宅後はビールを飲みながらテレビで巨人・阪神戦を観戦みたいな、仕事と娯楽がはっきり分かれたライフスタイルだったと思う。

所が、デジタル配信が活況となれば、外回りの営業マンが客先訪問の間の空いた時間を利用して、映画を観ることが可能になる。一時間を予定した客先との面談が先方事情で15分に短縮されたり、次の移動時間に15分程度の余裕を見るのは割と当たり前のことと思う。そして、この時間を活用して、所有の携帯Deviceから、細切れに映画を視聴するのだ。

昼間に欲求が、ある程度満足されれば、帰宅後漫然とテレビを観たりするのではなく、FaceBookでの友人、仕事上付き合いある人間との意見交換や情報収集、昼間観た映画の感想発表とか、友人の推薦する映画のピックアップといったことに時間使うのではないだろうか?

どうも、起床してから就寝まで、仕事、勉強そして娯楽が、時間と場所に拘らず、本人に取って最適のかたちで行われるようになるのではと推測する。

第三の変化は、ケーブルテレビやスカパーといった、所謂デジタル多チャンネルサービス会社で起こる筈だ。アメリカでは既にケーブルテレビ、衛星放送サービスの加入者が減少に転じている。高価な月額料金と、陳腐な多チャンネル放送に愛想を尽かした加入者が解約に動いているのだ。コード・カッテイングというのはこの事である。

第四の変化は地上波に顕著に表れるはずだ。昼間に携帯Deviceを活用し、コンテンツに触れる事でそれなりに満足してしまい,帰宅後はFaceBook,Twitterで情報収集、意見交換に時間使い、テレビのスイッチ入れない日が多いとか、デジタル配信によるお好みの映画を観る為にテレビを使うパターンが増えると思う。当然視聴率は低下する。地上波の弱点はソーシャル連動が弱いことだ。

第五の変化は無線、有線を問わずトラフィックの急増である。特に、無線通信の所は帯域を大幅に増やすとか、基地局を増設するとか相当しっかり対応しないと、映像サービスは無理な地域や時間帯が増えると推測する。

この意味からも電波帯域の割当ては、官僚が省益ありきで恣意的に決めるのではなく、オークションで本来必要とすべき所に割当てられるべきと思う。

NTTのフレッツは随分売り易くなるはずだ。今のまゝではFTTHは無線通信に劣り、所詮ニッチで贅沢なサービスに過ぎないが、ハリウッドの話題の新作をHDで安定して楽しめるとなれば、全く話は違ってくる。

顧客創造に失敗した結果、市場が飽和してしまい、結果困窮した代理店が暴走するケースも多い様だが、この悩みも一気に解決するかもしれない。

それでは、日本のNetFlixの候補はどこだろうか?TSUTATAを第一候補に挙げたい。最近の一連のMBOに向けた積極的な動きはこの為のものではないかと、勝手に推測している。勿論、店舗を持たずDVDの宅配業者であったNetFlixに比べ、TSUTATAは国内に多くの店舗を持つだけに、モルタルとクリックの食い合い問題はある。

TSUTATAに続く勢力としては、Apple(iTune),Amazon,楽天そしてYahoo!,Japanを挙げておく。

或いは、全く無名の会社が彗星の如く現れるかも知れない。

番組のネット公開に消極的な地上波のデジタル化等、結局何のインパクトもなく、2011年はパッケージメデイアからデジタル配信へとパラダイムシフトが一気に進んだ年として後世記憶される事になるような気がする。

山口 巌

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