首都圏の停電という日本経済の思わぬ伏兵

2011年03月17日 01:46

毎日のように余震が続いている。福島原子力発電所の収集のつかない大事故による放射能漏れのニュースが毎日テレビから流れてくる。各国大使館が日本からの退避勧告を出したため、ここ数日は東京で働く外国人が次々と日本を去っていった。町を歩けば、商品棚が空っぽのスーパーやコンビニ、閑散とした繁華街、節電のために電気を暗くしている高層ビル、そして東京電力の計画停電により真っ暗になる町。未曽有の大地震ではあるが、直接は被災しなかった首都圏でここまで影響を受けるとは、筆者にとっては全くの想定外であった。筆者はそれでも東京に留まり、いつもどおりの生活をしているが、荒れ狂う株式市場の中で日本から避難した同僚の分まで仕事をしているせいか、多少、疲労が溜まってきているような気がする。しかしこんな時こそ、人々の生活のインフラストラクチャーである金融機能を止めてはいけないという思いで、日々仕事をがんばっている。日本がこの大震災を克服して復興していくために、絶対に市場は閉めてはいけない。


経済的には、被害の大きかった岩手・宮城・福島の3県分のGDPは日本全体のせいぜい3、4%であり、直接の被害を受けた地域はその内でもさらに少ないので、日本のGDPの1、2%ぐらいが最悪失われるだろう、と筆者は考えていた。よって日本全体の経済への影響はそれほどではない、と思われた。ところが日本経済にとって思わぬ伏兵が現れた。福島原発はもちろんのこと、東京電力の発電所のいくつかが津波で破壊されてしまったのだ。そしてGDPの40%以上を稼ぎ出す首都圏の電力不足という思いがけない脅威に直面することになってしまった。

電力不足により電車のダイヤが乱れ、安定した電力供給を前提にして設計されている工場が次々と稼働停止に追い込まれた。これは首都圏の経済活動を大いに抑制することになろう。この電力不足がどれぐらいで回復するのか、今のところ不明だ。発電所を簡単に建設できるとも思えないので、かなりの長期に及ぶ可能性がある。原発事故による放射能漏れの影響から、東京の外資系企業の機能が速やかに香港などの国外に移された。東京での活動を大幅に縮小した外資系企業が、また東京に戻ってくるのか定かではない。

今後数十兆円単位でかかる復興費用は、日本の財政に重くのしかかるだろう。日本はいうまでもなく1000兆円もの公的債務を抱えている。多くの経済学者がこのままでは必ず日本は財政破綻すると予測している。ちょうど今回の東北沖や東海沖のプレート境界が津波を伴う大地震を起こすことを多くの地震学者が確証を持って予測していたように。こういったプレート境界の地震は今後100年以内にほぼ必ず起こることは予測できても、それが明日なのか1年後なのか、あるいは10年後なのかは誰も予測できない。日本の財政破綻も明日なのか10年後なのかは予測できないのである。この状態からさらに大量の国債を発行して復興支援に当て、かつ日本国債の信用を維持させるのは、まさに福島原発での困難な鎮火作業のようなものになろう。

金融政策の方も今までのゼロ金利政策や量的緩和によって大方の弾は使い果たしている。政治にいたっては支持率が20%を切り、民主党内で内ゲバが始まり、まさに末期状態であった。そんな最悪の状態で、今回の未曽有の東北地方太平洋沖地震が日本を襲ったのだ。本当に最悪のタイミングで神様は我々日本人に試練を与えたのだと思う。

このような大災害にも関わらず、津波に襲われた多くの地域で、驚くほど多くの住民が高台などに速やかに避難し、被害を最小限に留めた。その後の自衛隊などの救援活動も迅速に行われている。被災地や停電した地域での犯罪もそれほど増えなかった。日本はすばらしいソーシャル・キャピタルを保有していることを世界に示した。世界各国が次々に支援を表明したのも、日本が国際社会の中で信頼されている証左だろう。日本人は市民レベルではまだまだ優秀だということが証明されたのだ。

しかし筆者は、日本経済が陥る最悪のシナリオにも言及する必要がある。首都圏の停電が長引くようだと、多くの企業の収益が悪化する。また莫大な支払義務が生じる保険会社の財務状況も心配だ。こういった企業業績の急速な悪化で日本の金融機関も不良債権を多く抱えることになるかもしれない。また停電により多くの工場が操業を停止しており、日本経済の供給サイドが毀損していく可能性がある。それが物資の供給不足を引き起こし、インフレーションがはじまる。そして復興支援にかかる財政負担が、日本国債を臨界点に押しやり、暴落の引き金を引くかもしれない。日本経済のメルトダウンである。

今回もっとも被害を受けたであろう東京電力は、地震発生から3営業日連続ストップ安で依然として取引が成立していない。

筆者は、被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた方々、ご遺族の方々に深くお悔やみを申し上げます。 そして今でも救援活動に関わっている多くの方々、福島原発で作業している方々に心からの敬意を表し、ひとりでも多くの方の命が救われることを祈っています。

参考資料
将来の選択肢がなくなるという財政政策や金融政策による景気対策のコスト、藤沢数希、アゴラ
東京電力は直ちに電気料金を大幅値上げせよ、金融日記

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