計画停電の先の、その先

2011年03月18日 17:08

計画停電とは何か。東京電力は供給側の情報は把握しているが、需要側のことを知らない。だから、この曜日でこの天候なら電力需要はここまで伸びるはず、といった予測をもとに、需要を絞り込むためにあらかじめ地域を分けて停電を実施するしかない。それが計画停電である。

このように、需要に関する情報がないままに、その時その時、需要と供給のバランスを必死で取っているというのが、今の電力システムである。それでは数年先、さらには10年先には電力システムはどのように変わるのだろうか。


太陽電池をはじめとする再生可能エネルギの利用が進むのは間違いない。電力会社に全面的に依存するのでなく、少しでも自宅(自事業所)で電力を作ろうと、今の混乱に学んで、人々は考えるに違いないからだ。

しかし、それは電力システムに大きな問題をもたらす恐れがある。太陽電池の発電量は天候に左右される。快晴のときには発電量が大きくなるが、自宅で使いきれない電力は電力会社が買い上げることになっている。いっぽう、雨が降り続けば電力会社からの電力を使う。この結果、電力需要は天候によって大きく変動することになる。需要と供給のバランスを取らなければならない、電力会社の負担は増すばかりである。

変動を緩和するために、今でも、太陽電池のとなりに蓄電池をバッファとして据え付ける、といった工夫がされている。しかし、それよりも効果的なのは、需要についてより詳細な情報をつかんだり、需要自体をコントロールしたりすることである。井上晃宏氏の「スマートメータがあれば、輪番停電は不要だった」という記事は、これを指摘するものだ。

スマートメータとは通信機能を装備した電力計のことだが、遠隔検針や遠隔遮断といった単純な機能の先に、家電機器との間に情報通信ネットワークを形成して動作を制御する技術が予測されている。つまり、電力会社からの電力や、自宅内に置いた太陽電池といった供給系と、自宅内の家電機器との間で門番の役割を果たすのが、スマートメータである。

太陽電池からの発電力が多ければ、給湯器を動かしてお湯を作り貯めし、洗濯機を自動的に動かして洗濯を開始する。電気自動車にも自動的に充電する。太陽電池からの発電力が少なければ、保温してあるお湯を回し、洗濯機は止めて待機し、電気自動車から家庭に給電する。そんな利用イメージが見える。

自宅の外との情報のやり取りも可能になるだろう。神奈川の太陽電池の発電力が減ってきたら、西から雲が流れて東京の太陽電池の発電量も減ると予測できる。そんなときには、時間がかかる洗濯機を動かすのは待ち、電気自動車に先に充電すればよい。これは、かつて慶応の村井純先生が提唱したインターネット自動車の、電力版である。

家電機器や電気自動車、太陽電池などが、スマートメータを介して電力需給に関する情報をやり取りすることで、環境への負担を軽減でき、電力システムも安定化する。このようなシステムを総称してスマートグリッドと呼ぶ。

テレビやビデオなどの接続にHDMIという標準があるが、消費者を囲い込むために、他社製品との相互接続性は必ずしも保証されていない。スマートグリッドでは関連する機器が膨大になるのだから、各社は囲い込みに走らず、接続インタフェースを標準化すべきである。

スマートグリッドが実現する時代には、広い地域に分散する多種多様な機器の間での効率的な情報流通と、それに基づく最適制御、つまり情報通信システムの側に、ビジネスとしての価値が集中するようになる。どんなに巨大な発電所を持っていたとしても、それはスマートグリッドに対する一供給者に過ぎない。東京電力の今回の事故は、中長期的に考えると、電力会社の地位を低下させていくきっかけになるかもしれない。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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