東電は発電と送電を分離せよ - 伊東良平

2011年03月26日 17:12

東京電力福島第一原子力発電所の事故は、日本の原発の安全性について大きな疑念を抱かせる結果となったが、事故の原因は原発の技術的問題ではない。東北電力の女川原発は、より震源に近く大きな揺れと津波に遭いながら、正常に止まり事故を起こさなかった。 事故の原因は、想定外の災害に遭遇し、安全に冷却ができない事態に直面しても、老朽化した原発の”廃炉”を早期に決断できなかった、東京電力の体質にある。 私は不動産コンサルタントであり、電力業界の専門家でも経済評論家でもないが、電力を使う一消費者として、東京電力の今後のあり方を提案したい。


福島の現場で事故と闘っている技術者の方々には敬服する。しかし「計画停電」への対応も含め、東電の管理・営業部門の体たらくには呆れてしまった。

市区町村ごとの停電区域をテレビで発表しておきながら、実際の停電範囲は住所(住居地域)ごとで整合しておらず、住民が混乱し自治体への問合せが止まなかった。被災地を停電させるなどの悪態。鉄道会社がどの変電所から受電しているかも正確に把握していない。

計画停電の区域を表した地図を配ることもせず、おまけに区域を点で表した地図をグーグルから先に「発表」されるなど、顧客が求めるものを全く理解していない会社である。普通の企業ならとっくに客が去っている。このような会社が普通に営業していられるのは、電力会社が地域独占企業だからである。

なぜ電力会社が独占企業なのか。それは、電力事業が「費用逓減産業」だから、というのが経済学の教科書的な解釈である。電力事業は多額の初期投資を要し、規模が大きければ大きいほど効率的で競争力が増すので、市場メカニズムに任せると上位一社のみが勝ち残り、自然と独占企業が残ってしまう。独占企業になれば価格決定を支配し経済全体に厚生損失が発生するので、むしろ事業会社に市場独占を許す代わりに、価格を認可制とし大儲けを許さなくする。これが電力会社を独占企業とする”理由”である。

では、電力事業は本当に費用逓減産業なのか。かつては電話も費用逓減産業と考えられていた。旧電電公社は独占企業で、電話料金も認可制だった。しかし衛星長距離電話や携帯電話、IP電話など、固定電話と代替できる様々なサービスが生まれ、電話事業が費用逓減ではなくなった。このため、電話事業を認可制にする”経済学上の”意味はなくなり、価格は自由競争になった。

そこで提案したい。東京電力は発電会社と送電会社に分割すべきではないか。送電と発電の分離は、海外ではすでに実例があり、日本でも以前から議論があったが、今こそ東京電力に限ってそれを行うべきである。

送電事業は確かに費用逓減であろう。だが発電事業は必ずしも費用逓減とは言えなくなった。発電専門の会社は既にあり、製鉄所や精油所での発電やガス会社による地区発電などが広域で普及すれば、送電する会社が発電しなければならない理由はない。ビルや家庭でもコージェネや太陽光発電が進み、電気自動車と連動した地域の充電システムなどが構築されれば、売電の方法を電力会社にのみに決めさせる必要もない。また、発電事業と送電事業が切り離されれば、鉄道会社や大規模工場などは、近傍の発電所(電力会社以外も含め)から直接電力を買って「自家変電」するということも、本格的に可能となるだろう。

東京電力は、全国他地域の電力会社と比較して送電距離が短かいにもかかわらず、首都圏という「大消費地」を独占している。また元々、発電箇所を域内だけで確保することが困難な電力会社である。今回のような問題を引き起こした会社は、発電会社と送電会社に分割し、送電会社を東京メトロのような公有民営会社とし、発電事業は市場原理に任せ、自由競争とすべきだ。

送電事業会社は独占を許し価格認可制とするが、複数の発電会社や他の電力会社から電力を買って運営させる。その方が効率的である。発電事業は安全面の施設免許のみを行い、事実上の独占を許す必要はない。

電力の小売自由化(平成12年)程度ではダメだ。平成21年の発電専門会社(PPS)の東京電力域内での市場シェアは、高圧電力で4.0%、特別高圧電力で6.9%程度である(資源エネルギー庁調べ)。送電事業者と発電事業者の資本関係を断たなければ、発電事業の自由競争は決して実現しない。

発電と送電を分離することによる技術的な弊害が多いという指摘も出るだろう。しかしこれは、「技術的な」問題であり解決は難しくない。むしろ、職員の処遇をどうするか、という人的な問題の方が大きいかもしれない。

東電にはこれから多額の地元補償と復興支援の負担が求められる。地域独占の”公益”事業者は、潰せない企業であるからといって、その地位に甘んじることは許されない。

(伊東 良平 不動産コンサルタント)

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