東日本大震災により貿易黒字が急減、そしてポイント・オブ・ノー・リターンへ

2011年04月21日 02:03

今日、財務省が発表した3月貿易統計速報によると、日本の貿易収支は大幅に落ち込み、前年比では78.9%減となった。2008年の世界同時金融危機以来の落ち込みである。東日本大震災後のはじめてのマクロ統計データであり、改めてサプライチャーンを破壊され、電力不足による計画停電により輸出企業の生産活動が大きく制限されたことが、裏付けられた。過去一年ほど非常に好調であった日本の企業の業績に急ブレーキがかかった。またこの統計は非常に好調であった3月11日前までの分が含まれているので、4月の値はおそらくもっと悪いだろうということが容易に想像できる。しばらく貿易収支は赤字に転落する可能性が高い。

貿易収支の推移(季節調整済)
出所:財務省のウェブ・サイトより筆者作成


日本は膨大な政府債務を抱えながらも、同時に世界最大の債権国であった。そして恒常的な経常収支の黒字が、日本国債とその信用に担保される円の価値を保ち続けてきた。また過剰な供給力から物価もデフレ気味に推移してきた。311以後は、こういった今までの日本の経済環境が大きく変わったのかもしれない。

東北地方で被災した工場は必死に復旧作業をしている。日本の輸出企業は傷ついたサプライチェーンの回復に必死に務めている。東電は福島原発の事故を収束させる作業に全力をつくしながらも、この夏の電力供給の増強に必死に取り組んでいる。日本の経済的な豊かさというのは、このような世界的な競争力を有する、ほんの一握りの企業群に支えられているのだ。こういった輸出企業の競争力ゆえに円の価値が高止まり、海外から多くのモノやサービスを安く購入でき、膨大な数の雇用を抱える小売や外食のような内需産業を支えている。一握りの優良企業が日本からいなくなれば、日本は世界の中で老いた貧しい国として埋もれていくだけなのである。

このような危機的な状況の中で、日本の政治、メディア、そして国民も変わるだろうと、筆者は淡い期待をしていた。しかし残念ながらそのようなことは起こらなかったといわざるをえない。日本のメディアは3万人の命が犠牲になった地震や津波の報道に飽きたら、次はまだひとりの犠牲者も出ていない微量の放射能汚染を連日騒ぎ立てた。そして福島第一原発の事故の被害を、二次的な風評被害により何倍にも拡大させた。メディアに煽られた国民は、原発に賛成か反対か、という見るに絶えない二元論に終始し、風車だ太陽だ、といった夢物語を熱心に語り合っている。今、日本経済の最大の制約要因が夏の電力不足だというのに、だ。メディアは風評被害を煽ることにより、福島県に大きな経済的な損失を与えた次は、柏崎などで定期点検中の原発の再起動を妨げることにより、さらに日本経済に致命的なダメージを与えようとしてる。

政治にいたっては、そういったメディアや国民に迎合するポピュリズム、醜い権力闘争を相変わらず繰り返している。この大震災の復興財源を、アジアですでに最高税率の法人税や、最高水準の所得税の累進制に求めようとしている。国債の発行により、将来世代に無責任に費用を付け回そうとしている。消費税率引き上げ、法人税率の引き下げ、所得税の累進制の緩和を可及的速やかに実施しないといけない。ここで改革できず日本が正しい方向に進むことができなければ、いよいよ日本経済はポイント・オブ・ノー・リターンに達するだろう。

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