大前研一氏を日本のリチャード・ファインマン博士にしよう

2011年04月22日 17:48

いささか旧聞に属するトピックだが、今回の震災後、菅総理が招集した「復興会議」のメンバーが、あまりにも文系でビックリした。


梅原猛さんは個人的には大ファンだ。大学生時代、「隠された十字架」を友人にすすめられて、はまりまくった。しかし原子力は怨霊ではない。

すでにこのアゴラ誌上で何回も指摘されているが、今後の原子力発電政策は、日本のエネルギー政策の将来という枠組みのなかで、理詰めで議論されていくべき問題だ。

最近では「歎異抄」の研究など、仏教研究の著作が多かった梅原氏が、「文明災だ!」などと怪気炎を上げ、原発問題を氏の土俵に引っぱりあげようとする姿をみて、この人物に日本の将来への指針を示してもらおうという気にはなれなかった。(日本の歴史と文化の研究における氏の貢献は不朽だろうが。)

このような、総理の私的文芸サロンのごとき「復興会議」を立ち上げたことが、どれだけ今なお避難所生活をおくる被災者のためになったのか。

菅総理にかぎらず、政治家の皆さんが、あちらこちらで開催したり、参加したりしている勉強会のたぐいも、その中身を覗いてみると、お寒いかぎりだ。

今一番必要なのは、日本の「安全神話」「先進技術国神話」が崩れ去った現状を認め、その根本の原因である福島第一原発事故の当面の対処方法の確立と、徹底的な原因解明、そして稼働中の他の原発に対する改善策の策定を、同時に進めることだろう。これをしない限り、日本が失った世界の信用は二度と戻らない。

これはもちろん当事者である東京電力に任せるべき問題ではない。ましてやその直接の監督官庁であった経産省にも任せられない。

当面、この問題を菅総理に突然丸投げされたかに見える細野補佐官は、この目的のために、先の短い現政権の寿命を越えて存続するしっかりとした枠組みを作る必要がある。

1986年1月に起きたスペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故を調査すべく、同年6月にレーガン大統領は元国務長官ロジャース氏を委員長とする調査委員会を設立した。調査委のメンバーには、ニール・アームストロングや、チャック・イェーガーといった航空宇宙開発のセレブリティもいたが、一番活躍したのは1965年に日本の朝永振一郎博士と共にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン博士だった。

ファインマン博士は、時にはロジャース委員長の不興をかいながらも、独自にNASA関係者へのインタビュー調査を行い、NASA組織内における管理職と技術職の間におけるコミュニケーションの断絶を浮き彫りにし、特に「安全率(セイフティー・ファクター)」に関する現場とマネジメントの認識の差を暴いてみせた。

ファインマンは自分独自の見解が調査委の最終レポートに含まれなければ、調査委を辞任すると主張し、彼の調査結果は最終レポートのアペンディックスFとして掲載された。彼の結論は以下の名言で締めくくられている。

For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for nature cannot be fooled.
技術が成功裏に適用される為には、現実はPRに優先しなければならない。なぜならば、自然はだまされないからだ。

今の日本に、ファインマンの役を引き受け得る人物は、大前研一氏をおいてほかにいないのではないだろうか。同氏による震災後の一連のYouTubeクリップをみて、そう思うのだが、どうだろう。

ついでに念を押しておくが、これは世界が納得しなければ始まらない話なので、調査委には海外からの参加者も当然必要だ。幸いフランス、アメリカなどが喜んで手を上げてくれそうなので、これを利用させていただこう。

なにはともあれ、今回その産官学複合体の癒着ぶりをあますことなくさらけ出してしまった経産省/東電御用達の学者先生たちではとてもじゃないが、つとまらない話であることだけはたしかだ。

矢澤豊

オマケ
ロンドンの大学時代、親友にすすめられて熟読した。後半部分はロジャース調査委の回想。

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