復興財源は消費税率の引き上げの一択

2011年05月19日 00:41

20兆円ともいわれる東日本大震災の復興費用の財源は未だに決まっていない。福島第一原発の事故による避難住民や風評被害の補償も最終的には多くの部分が国民負担となり、この費用も含めると必要な財源はさらに膨らむであろう。そしてこれらの復興費用の財源をめぐって、赤字国債のさらなる発行か、日銀による国債直接引き受けか、増税か、そして増税ならどの税金によるのか、様々な識者によって議論されている。しかし筆者は財源に関しては消費税率の引き上げの一択しかないと考えている。


日本国政府はこれまでさんざん財政赤字を積み上げてきた。これはデフォルトかインフレにより借金を踏み倒なさないかぎり、将来の税金である。今のところ、市場は将来の税金になると考えているので、相変わらず低金利で政府は資金調達できるのである。逆説的だが、政府が徴税権を使って返済しないと市場が判断すれば、すぐに制御できないインフレになるであろう。つまり赤字国債はよくいわれているように、子や孫の世代に負担を先送りしているに過ぎないのだ。そしてこの震災や原発事故の負担も、また同じように子や孫にツケ回していいのだろうか。筆者は、まったくそうは思わない。復興のための費用は、我々で負担しなければいけないのだ。つまり税金である。それではどのような税金がいいのかと考えると、それは消費税の一択しかないのである。

所得税・法人税・消費税の推移

出所:財務省のウェブ・サイトより筆者作成

過去20年間、所得税収は下がり続けた。30兆円近くあった所得税収は今では年間12兆円程度まで落ち込んだ。法人税収も下がり続けた。小泉政権の時に輸出産業が息を吹き返し、多少税収が増えた時期もあったが、やはり過去20年間下がり続けている。所得税の最高税率、法人税率、ともに世界最高水準の高さであるにも関わらず、だ。その点、消費税による税収の安定感には眼を見張るものがある。1997年に5%に引き上げられてから、ほぼ一貫して10兆円程度の安定した税収をもたらしてきた。消費税は景気に左右されないのである。

所得税の最高税率やすでに高率な法人税を引き上げても逆効果なのだが、それは以下の理由による。1.儲けることを罰することにより労働意欲が低下する。2.租税回避の様々な方法が実行される。3.高額所得者や高収益企業の海外への流出を加速させる。政府はこのような明らかな現象を理解するべきだ。今、税収を引き上げようと思ったら、それは消費税しかありえないのだ。また、現在は電力不足による供給制約があり、消費税率の引き上げによる需要の抑制は―仮に一部の消費税反対論者が主張するように本当に需要が抑制されるとしたらだが―経済政策的にも教科書通りに正しいことなのである。

むろん、消費税率を引き上げるといっても、現在のような売上の少ない零細企業に対しての益税を廃止したり、欧州のようなインボイス方式にしたり、国民納税者番号を導入したりと、いろいろとやるべきことはある。しかし復興財源は消費税しかないという結論は変わらない。筆者は次の世代へ負担を先送りするような恥ずかしいことは終わりにするべきだと常々考えている。一か八かのリフレ政策などもってのほかだ。

参考資料
いよいよ消費税が切り上がる、アゴラ
所得税はフラット10%にして大幅な税収アップ、アゴラ
サラリーマンなのに消費税アップに反対するのは脳ミソが溶けているとしかいいようがないという件に関して、金融日記

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