TPP加盟反対は、農業を騙った既得権益者の戯言

2011年05月26日 10:00

中国が不参加を表明した後のTPP加盟国・交渉国に日本を加えた10カ国のGDPを比較しますと、アメリカ:67%  日本:24%  オーストラリア:4.7%  その他(7か国):4.2% で、その9割以上を日米2カ国が占めています。国としての経済力から見れば、日本がTPP加盟を恐れる理由はありません。


TPP加盟反対を唱える人々の本当の狙いは、農産物を含む関税撤廃反対ではなく、TPPが目指す加盟国間の経済制度、サービス、人の移動、基準認証などの自由化や新しい基準の導入に依る既得権の失墜を恐れるからではないでしょうか?

純ドメ(非国際的)制度に守られた日本の金融、報道、電子取引などのサービス、投資ルール、弁護士、医師を含む労働規制や環境規制を、国際的に通ずる基準に改定を求められた場合、日本のエリート構造に激震がおこる事は間違いありません。

例えば、現時点の郵政改革関連法案が金融の非関税障壁とみなされる可能性や外国企業の進出・投資規制や弁護士、医師などの知的サービスを含む労働者の受け入れ制限が難しくなるとしたら、国内エリートにとっては大変な事です。

TPP加盟反対の真の理由は、日本農業への打撃ではなく、利権構造の破壊を恐れる為としか思えません。「食糧安保論」に至っては、機械化と老齢化の進む日本農業は、燃料確保なしには考えられず、国際的なシーレーン防衛にも協力せず、テロ対策にも関心を示さない人々の「食料安保論」など笑止千万としか言いようがありません。

戦後経済復興の努力は、日本の経済水準が1人当たりの国民所得でアメリカの14分の1、鉄鋼生産では10分の1、自動車生産になると100分の1以下と言う惨めな状況に置かれた1950年から始まり、奇跡的な成功をおさめました。

「もはや戦後ではない」と結語に記して有名になった1961年の経済白書は、「われわれは日々に進み行く世界の環境に一日も早く自らを適応せしめねばならない。そしてそれを怠るならば、先進工業国との間に質的な技術水準においてますます大きな差が付けられるばかりでなく、長期計画によって自国の工業化を進展している後進国との間の量的な開きも次第に狭められるであろう」と予測しましたが、その後の経過はこの正しさを証明しています。

日本の多くの産業が変遷する世界の環境に自らを適応させる為に「自立」「技術革新」「産業合理化」「貿易と資本の自由化」「消費流通革命」を目指して常にスクラップアンドビルトの努力を続けているとき、日本の農業政策は自助努力を捨て、保護政策を採りました。その結果、篤農家を苦しめ、利権構造を肥らせる日本農業を導いた事は皆の知る処です。菅首相が「貿易の自由化いかんにかかわらず、このままでは日本の農業の展望は開けない」と述べた日本農業の危機は、政策失敗の必然的な結果です。

日本農業は過剰保護による無風の時代が余りにも永すぎました。日本農業再興の第一歩は、補助金の全廃と自由化から始めるべきで、補助金無しに自立出来ない農業は、理由の如何を問わず見捨てる事が絶対条件です。

日本が小選挙区制を採用する以前は、人口比でドイツの14倍もの工務店が農業土木を生業として各地方に存在し、全農と共に保守派の「集票マシン」の中心を果たしてきました。TPP加盟反対派の牙城が、「集票マシン」と重なるのも偶然ではありません。

日本農業の隠れた危機はその人口動態にあります。一気に移民自由化とまで行かなくとも,就労ヴィザの緩和など若年農業経営者に魅力的な新しい農業環境の整備をすることと、セーフテイネット網を広げて高齢農業者の離農を促す事が、日本農業の再生には避けては通れない道です。

TPP加盟国の多くは日本の農業技術に大きな期待を寄せており、狭い国土と人口過剰に悩むこれ等の国の繁栄には、日本の農業技術の導入は欠かせないものです。日本のTPPの加盟がこれ以上遅れると、勤勉な韓国の農業技術がその穴を埋めてしまう危険すらあります。

経済自由化の波は、先進国の国際収支を貿易収支中心主義からサービス収支、金融収支中心に移しつつあり、日本も貿易差額主義的な考えから脱皮して、むしろ技術や知的財産を中心とした考えに移行すべき時代で、農業技術の輸出は時代の変遷に沿ったものです。

TPP加盟は篤農家を助け、農業利権を殺す良薬です。現に、日本の消費者と篤農家は、柑橘類の自由化紛争から肉類の自由化に至るまで、受益者ではあっても、被害者になった例はありません。

自由化は農水産業を、穀類、肉類、魚類と言う「物質名詞の生産業」から、固有のブランド持った「食品産業」へと変貌させました。「食糧庁」が廃止されたのもこれが一因でしょう。TPP加盟は、むしろ日本農業の活性化と若者の農業復帰を促す絶好の機会です。

現在の統治機構や利権を守る事が「国益」であるならいざ知らず、人口縮小に悩み、知恵と勤勉性に恵まれた日本は、自信を持ってTPPに加盟しTPPの今後の有り方について指導性を発揮する事こそ国益に沿ったものです。

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