グローバル化が進んでいく中で識者の方々からも「若い人は海外に行け」と、よく言われる人が多くなったように思います。逆に、商社では「若い人達は海外に行きたがらない」という傾向にあるという声も聞こえてきます。そして当事者である若者はというと、実際は外向き志向の若者と内向き志向の若者が二極化しています(参照)。

しかしこの「海外に行け」という言葉に若い人達は気をつけて欲しいと思います。海外に行って日本に帰ってくることはリスキーなことが多いのです。

どういう部分でリスクがあるのかというと、一番の問題点は就職・雇用でしょう。「海外に行け」と言っている割には、留学経験者を採用したいという企業は大企業で4割しかいません(参照)。海外に行けと声高にいうなら、そういう留学経験のある人たちは真っ先に採用されてしかるべきです。しかしそうはなっていません。当然、留学期間が就職活動の期間(3年生12月〜4年生8月)に重なっていたら、就職活動の入り口に立てなくなることは学生にとって常識です。

数年前、海外に行った経験のある二人の既卒者の就職相談に乗ったことがあります。

一人はネパールに日本人教師として留学していた男性です。有名国立大学出身の方で、話もすごい上手でいわゆる「コミュニケーション能力」も高い男性でした。にも関わらず留学の時期と就職活動の時期が重なっていたことで就職ができず、卒業してからも既卒としての就職活動で「新卒以外は採用していない」と言われ、電話口で断られることばかりだったということでした。

もう一人はアメリカの大学を卒業した方で、明るくて話も上手な方でした。政治や経済にも興味を持っていましたし、「この社会を良くしたい!」という情熱も持っていました。ですが、アメリカの大学を卒業してから日本に戻ってくると、就職先が無くて困っていました。アメリカの大学卒ですから、既卒としての就職になるわけですが、彼もまた就職活動に苦しみました。

上記の二人は最終的に就職が決まり、私も一安心でした。しかし結局、留学での海外経験が全然役に立っていない、と言う証拠になっていると思います。

また、人によっては「日本の将来のために海外で力をつけて日本に戻ってきて欲しい」という人もいます。しかしそもそも、留学や海外での実務経験などは自国のためにするものなんでしょうか。日本の国益になるから海外に行くのでしょうか。若者は日本のためにならないのであれば、海外で経験を積むべきではないのでしょうか。必ず日本に戻らないといけないのでしょうか。

もし海外に行くのであれば「自分のため」に行くべきでしょう。自分自身が海外で経験を積みたいとか、途上国のために働きたいというのであれば、私は大賛成です。どんどん行くべきでしょう。海外へ行く理由が自発的理由であれば、いい結果を残すと思います。逆に無理矢理海外に行かされた所で、いい結果を残すとは思えません。

「最近の若者は海外に行かない草食・内向き志向でなっとらん!」というのであれば、ぜひ中高年の方々に海外で活躍する姿を見せて欲しいと思います。海外に行くことで出世し、そしてモチベーション高く働いている姿を若い人達が見れば、海外に行きたくなるでしょう。ちょうど、堀江氏や藤田氏たち、ベンチャー企業に多くの若者が憧れ、ベンチャー企業への就職や起業したいと思っていた時代のように。なぜ中高年の方々はそうしないのか、不思議です。

もし本当に多くの若者が海外に行って欲しいと思うのならば、海外に行った若者が活躍できる場を作るべきでしょう。海外で大きく成長した若者が日本に帰ってくると就職すらできないという状況では、若い人達が海外に行こうなんて思わないでしょうし、帰ってきて日本で働こうとは思わないのではないでしょうか。むしろ海外での経験をした貴重な人材は海外に逃げていく可能性もあります。

今の状況で気軽に海外に行けと私は言えません。海外留学者を増やす前に必要なことは、日本の雇用規制の緩和等、海外留学をした若い人達を受け入れる態勢を整えることではないでしょうか。私はそう思います。

松本孝行(ブログ


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