Googleの規約改訂問題に日本の行政は何もできないだろう

2012年02月27日 15:14

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我々には選択肢がない。

Googleが、3月1日より規約を改定し、バラバラになっていたサービスのユーザー情報を統合するという1月24日の発表が波紋を呼んでいる。我々はどんなリスクを負っているのかがわからないまま、Googleのサービスを使い続けるしかない。しかし、これこそが日本という国家も企業も新しい時代に適応できない象徴ともいえることだ。

はっきりしていることがある。この規約変更問題に対して日本の行政には対応を期待できないということだ。24日に、川端達夫総務相が、閣議後会見で「懸念はある。どういう対応が可能か検討している」と触れた。しかし、こうした海外からの動きに対して、過去日本の行政が迅速に動いたケースはない。後手どころか、無策に近い。


Googleは、これによってユーザーの利便性が増すと主張している。非常にシンプルにまとめられた新しい規約は理解しやすくなったと評価する声も多い。しかし、本質的な問題は変わらない。ユーザーには統合された自分のデータがどのように管理されているのかを知る方法がない。ユーザーとサービス企業の個人情報についての非対称性が増すという結果が生まれる。Googleはいつでも辞めることができるとオプションを提示しているが、その選択は不可能だ。

行政がGoogleの戦略に反応した前回のケースでは、08年8月に、Googleマップの「ストリートビュー」の機能を日本でも開始した時だ。日本国内でもプライバシー問題に抵触するのではないかという懸念が広がった。

だた、実際に、総務省が動いたのは、翌年の09年4月に「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」を立ち上げてからだ。しかし、提言書をまとめ、発表は行ったのは、6月22日とサービス開始から10ヶ月も遅れてだ。結論としては「ほとんど制限のない事実上の黙認」、その後、それ以上の議論は行われていない。

スタンフォード大学のサイバー法学で有名なローレンス・レッシグ教授は、「コードは法律を越える強力さ」を持つことを指摘している。なぜ、日本の企業が情報産業分野で大きく遅れることになったのかは、「コード層」と呼ばれる国境を越えて押し寄せるICTの新しい性質の時代に入ったからだ。

コードとは何か。レッシグの著作の訳者の山形浩生氏は、『コモンズ』
のあとがきで次のようにまとめている。

インターネット関連の法規制が未整備だ、といった話はよくきくけれど、それは今言った、法律の条文だけしか見えていない。実はインターネットには、法律以外にとても強い規制を行っているものがある。それはコード、ソフトウェアだ。ネット上の人々はソフトウェアで許されていないことは一切できない。(P.409)

レッシグはコードの政府がコードを通じた管理強化を推し進めようとしていると言う。サイバー空間のイノベーションの継続のため、政府に対する公共が監視する必要性を首尾一貫して主張している。

ところが、日本ではそうした議論がそもそも存在していない。コード層がどれほどのパワーを持つのかを行政が理解しているのか疑わしい。マイクロソフトが日本のOS分野を独占していても、独占禁止法の問題点として過去に扱おうとしてはいない。今のクラウド時代には、コードは物理メディアではなく、インターネットを通じて、一方的にやっている。それは日本の法規制よりも強力な力を持っている可能性があるにもかかわらずだ。

コードは法律よりも強い面があると同時に、その変更の速度も速い。政府がゆるゆると対応をしようとしている頃には、すべてが終わっている。実施が直前に迫っている今、日本政府には何もできないだろう。

実際、日本では「情報政策」は、どこの管轄になるのかが、常に曖昧な状態が続いている。インターネットのインフラまわりは総務省が担当しているが、一方で、企業の活動という意味では経済産業省が担当している。しかし、セキュリティやプライバシーといった部分には曖昧な線引きが続いている。さらに、情報政策の国際戦略のグランドデザインを担当している政府部局は存在しない。

Googleのみならず、FacebookやTwitterなどのアメリカ企業が日本のコード層が国境を越えて握ることにより、相対的に国家の力は弱くなる。そのリスクの検討は国家の情報戦略を考える上で、必須なのだが、この議論は国内では、真剣に議論されている様子はない。

一方で、アメリカでは米連邦取引委員会(FTC)があるし、電子フロンティア財団(EFF)といった民間の監視機関が存在する。

欧州もデータ保護に関する第29条作業部会(Article 29 Working Party)が迅速に反応し、「改訂の発行保留」を求めた。Googleはこれを拒否するようだが、ここには個別の企業にどこまでコード層を認めさせていいのかというという、地域の行政府の主導権を握る争いがある。

日本の行政も何ヶ月か後には、一定の答えを出すだろう。しかし、それはすべてが終わった後だろう。本来であれば、情報省といった形で専門の省庁を作り情報政策を統括するべきだが、現状ではそういう動きはどこにも感じられない。これも今の日本の情報分野での弱さの理由の一つだ。

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