橋下氏はアゴラ上へ反論せよ

2012年04月08日 15:07

先日、出張で大阪へ行った。政治ネタと言えば、おのずから話題は橋下徹市長と維新の会になる。

案の定、乗った二台のタクシーの運転手さんとも橋下氏を絶賛。とりわけ市営バスの給与引き下げには拍手喝采だった。日頃、運転マナーの悪い大阪で運転し、市営バスの傍若無人ブリにも悩まされているのだとか。その結果、行政へ敵愾心がわいているのだろう。


逆に、キタや宗右衛門町あたりの飲食街で橋下人気はそれほど高くない。横浜の中田宏前市長が、関内や伊勢佐木町などの市街地で不人気だったのに似ている。筆者は横浜の中区在住なので、今でも飲み屋の主人が発する中田氏への罵詈雑言をよく聞く。これは行政改革や財政再建には、歓楽街へ落ちる金が少なくなるという一面があるせいだ。橋下氏と中田氏が大阪で一緒に仕事をしている、ということもなにやら象徴的だろう。

これまでの橋下氏の戦術の特徴は「市民の敵」を探し出して叩く点にある。サンプルが少なくて恐縮だが、大阪のタクシー運転手が喝采するのはそうした不満をすくい上げたからだろうし、おそらく筆者が大阪で感じた市民の印象は間違っていない。繁華街での不人気は、彼らが社会に感じる反感と橋下氏が設定する「市民の敵」にズレがあるからだ。

ちなみに、この「市民の敵」戦術については「橋下徹のポピュリスト宣言」などでその財政論を一貫して批判している辻元氏が「『国民の敵』ビジネスについて」で詳しく論じている。

本来、橋下氏の主敵は霞ヶ関の官僚機構なのだろう。だが今は地方の首長だから、前段階で自らの主義と嗜好に合致する「市民の敵」を探した。その結果、府や市の役人、教員などをターゲットにした、というわけだ。単に組合や役人が嫌いなだけのかもしれないが、さらに返す刀でこうした戦術に反発する「識者」を撫で斬りにしたのは記憶に新しい。

その橋下氏の一貫したディベート戦術に「行政の現場を知らない者は安易に批判するな」という論法がある。自らは大阪府知事と大阪市長をつとめ、現場を熟知している、と自負しているのだろう。この言葉を金科玉条のごとく発して論敵を叩く。細かい数字や具体的な問題例を挙げ、そんなことも知らないのか、と相手を論難するわけだ。相手を自分の土俵に上げて戦うのがうまいとも言えるが、周知のようにこれはそれほど高度な戦術ではない。

橋下氏が、ツイッターで情報発信しているのは有名だ。そのつぶやきをブロゴスがTogetterのようにまとめているが、最近は池田信夫氏の投稿「『橋下=小沢政権』の運命」やアゴラ執筆陣に反論し始めた。論旨は、行政の現場を知らない物知りは無力だ、というもの。また、池田氏に対し、政治行政の経験を積め、と勧めてもいる。

これに対し、池田氏は「橋下徹氏への反論」とし、いちいち丁寧に論駁しているが、どうも議論が噛み合わない。小黒一正氏がつぶやいたように、理論を実践するのが政治家であり、政治家が識者に実践を求めてもしかたない。さらに、現場も知り物知りでもあるとする官僚に対抗するためならなおさらであり、識者の知識を活用できない政治家が官僚に勝てるはずもない。

ただ、この一連の流れには、ブロゴスに対する池田氏の批判が、微妙に絡んでいるような気もする。だが、池田氏のブロゴス批判は的を射ていない。なぜなら右から左まで虚実混在しつつ掲載するスタイルがブロゴスなのだから、ブロゴスをメディアとして扱っての批判は的外れだ。

そもそも橋下氏と池田氏の間に、原発再稼働以外で大きな意見の差異があるとは思えない。ひょっとすると、池田氏が「橋下=小沢」連合に言及したために過剰反応したのかもしれない。本音を突かれたのだとすれば、この「野合」には確度の高い現実味があるのだろう。

しかし、叩く敵がいなくなり、うろうろと近親憎悪的に「市民の敵」を探し始めたとしたら、橋下氏の天下もそう長くは続かない。総選挙を見据え、政局化した国会周辺での話題は、ひとえに橋下氏らの勢力の賞味期限につきる。大化けする前に選挙するか、輜重補給線が伸びきって疲弊した頃にするか、既成政党は息を殺してみつめている。

いずれにせよ、橋下氏はツイッターでつぶやくのではなく、アゴラ上で堂々と論争して欲しい。編集部の一人として、橋下氏のアゴラへの寄稿を心よりお待ちしている。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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