日本にはなぜレディー・ガガがいないのか?(前編)

レディー・ガガは奇抜なファッションと過激なパフォーマンスで有名ですが、彼女こそはまさにソーシャルメディア時代の申し子と言える存在です。

数年前に発売になったDVDの中で、彼女はインタビューに答えてこんなことを言っています。


インタビュアー
「さすがのあなたも休日はジャージで過ごしたりするんでしょう?」
ガガ
「そんなことはしない。私は常にレディー・ガガ。どんな場合も同じファッションよ、これが私だから」

インタビュアー
「あなたにとって音楽とはなに?」
ガガ
「音楽は昔は(レコードやCDなどの)パッケージでありファイルだった。今では音楽はストリームになった。共有されるのが当たり前のものになった」

最初のやりとりは、彼女がファンはもちろんですがパパラッチも自分のメンターであると考えているからこそのものです。誰もがカメラとGPS付きのスマートフォンを持ち、ソーシャルメディアを介してリアルタイムに情報を共有できる時代です。だから彼女は常にファンが期待するレディー・ガガ像を堅持し、イメージを壊さない努力をしています。自分をマザーモンスターと呼び、ファンをリトルモンスターと呼んで独特の世界観を作ることでファンを囲い込もうとする彼女の戦略はある意味ファンタジーです。だからこそ、うっかりスッピンのジャージ姿をパパラッチされるようなことはあっては台無しになることを彼女はよく知っているのです。

二つ目のやりとりは、デジタル化された情報(この場合は音楽)は、コピーされ、消費され、共有されるべきものであることを彼女が理解している証拠です。ガガは積極的に自分のサイトやYouTubeなどを使って自分の楽曲やビデオを惜しみなく公開します。また、わざわざファンの前に自分をさらし、写真を撮り、勝手にWebに上げることを、むしろ奨励さえしています。一つ目のインタビューに関連しますが、彼女は自分のことを話題にするすべての層をうまく味方にすることの効用を理解しているのです。

ある意味、彼女は本当の素の自分を過激な扮装とメイクによって隠し続けている、極端な秘密主義者かもしれません。過剰なまでにショーアップされた自分のブランドイメージを徹底的に公開することで、プライベートの姿を見えづらくさせているのです。

小川浩( @ogawakazuhiro )