個人情報保護の名を借りて労働環境を守ろうとする日本図書館協会

2012年06月12日 12:00

佐賀県武雄市で市立図書館の運営をTSUTAYAに委託する計画が進んでいる。これに対して、図書貸し出しにTカードが利用されるのは個人情報保護の観点から問題だと、批判的な記事がいくつか掲載された。朝日新聞の見出しは『佐賀の「ツタヤ図書館」論争に Tカード履歴転用に懸念』だ。

日本図書館協会は5月28日に「武雄市の新・図書館構想について」と題する見解を公表した。見解は制度導入の理由や手続きを問題にした上で、労働環境について指摘する。「経費削減により図書館で働く人たちの賃金等労働条件に安定性を欠く事態」を招き、「安心して継続的に業務に専念できなくなる結果、司書の専門性の蓄積、一貫した方針のもとに継続して実施する所蔵資料のコレクション形成が困難になることの懸念です。利用者サービスの低下に繋がらないための労働環境が必要です。」と主張する。その後にやっと「図書館利用の情報」についての記述がある。

この順番は協会の懸念の軽重を示す。司書の労働環境を守ることの優先順位は、図書館利用情報の流用よりも高い。協会は個人情報保護の名を借りて労働環境を守ろうとしているのだ。


印刷版の朝日新聞記事には「行政が利便性のために、個人情報を企業に売っていることになる。それが公共図書館と言えるのか」との協会・西河内靖泰氏の意見が掲載されている。個人情報保護法では、「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいう。貸出図書リストだけでは特定の個人を識別することはできないので、貸出図書リストは個人情報ではない。貸出図書リストの前に「40代男性の」が付いていたとしても、特定の個人を識別できないことは同様だ。

西河内氏は「行政が利便性のために」というが、僕らがAmazonに購入履歴の利用を許しているのは、僕らの利便のためだ。貸出履歴を利用して新着図書の案内が来れば、武雄市民の利便は向上する。「行政の利便」とは認識が間違っている。武雄市の構想が西河内氏のような労働活動家の意見で妨害されるのを許してはならない。

山田肇 -東洋大学経済学部-

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