大学の資産は卒業生にあり --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

現在日本には大学があり余り、枠だけを捉えれば全入も可能な時代に突入しております。私立を中心に学校経営が危ぶまれているところもあり学生集めのために著名人を教授陣に迎えたりスポーツなどで好成績を挙げ大学のネームバリューを作り上げるようにするなど苦労が絶えません。


一方、大学を卒業したあとの社会を見ると一昔前の一流大学→一流企業入社→終身雇用で定年まで安定飛行という「夢と希望」は大きく舵を切りはじめています。学生自身にひとつの会社で一生を過ごすという価値観が薄れてきたこと、また、社会人になってから転職する人がごく普通になってきたことは大学教育のあり方も見直さなくてはいけない状況にあります。

そのような時代の変化の中で私は大学教育ではいわゆる卒業生との人的交流を促進するプログラムを打ち出したらどうかと思います。不思議なことに同じ学校の学生となると何年経っても人一倍かわいいものです。また、共通の話題も豊富であり、いわゆるネットワーキングという意味では最強の手段ではないでしょうか?

あわせて私は卒業生同士の結びつきである校友会をSNS型の大きな連携体として作り上げたら面白いと思います。

ちなみに私の卒業した大学は卒業生約32万人です。この人数の人がネットワークできたらあらゆる分野で活躍する人にたどり着けるでしょう。また、英語で言うalumni association を活発なものにし、同時に人生の先輩と在学生の間で交流したりアクセスできるようにすることで価値を引き上げたらどうでしょうか?

一般的に大学生は4年間で単位を取る、バイトする、クラブ活動をする、遊ぶ、就職活動するといったイメージから未だに大きな変化がないように思えます。大学側がどれだけよい講師陣、教授陣をそろえたとしても学生側にとってそれをどれだけ評価しているのでしょうか?

私は時代が大きく変わりつつあるのに大学自身の社会的存在意義の変質化が遅れていると思うのです。

日本の企業は韓国や台湾、はたまた中国の企業からの激しい追い上げにあっています。ものづくりニッポンは絶対であると信じすぎていて頑なになりすぎていませんか? なぜ、そこまで意固地になるかというといつまでも同じ土俵で戦おうとするからで次元を変えるという発想に帰着できないからだとしたらどうでしょうか? それは本来学生が柔軟な発想のもとでさまざまな経験、接点、勉学を通じて必死に努力しなくてはいけないのに大学4年間がまるでデパートのエスカレーターを上がり続けているがごとくとなっていないでしょうか?

私は大学の資産とは卒業生にあると思います。せっかくの資産が生かされていないとすれば実に残念ではないでしょうか? 学生は卒業生の声を聞きたいと思います。経験を語ってもらいたいと思います。こんなこと、あんなことをしている卒業生がいると知りたいと思います。それがプライドにつながり、同窓意識を高め、ひいては大学の価値を引き上げることになると思います。

もうひとつ、卒業生が手軽にフォローアップ講座として受講できるような仕組みが欲しいと思います(事実、そういうプログラムはぽつぽつ出始めているようです)。大学時代に勉強せずに後悔した人は大変な数に上ると思います。それら卒業生に社会経験を踏まえた上での講座が手軽に受講できたら最高だと思いませんか?

大学運営も工夫次第で卒業生をいかに振り向かせるか次第で大きく変わると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。