電力会社の社員に表現の自由はないのか

2012年07月18日 22:16

15日に名古屋市で開かれた意見聴取会での中部電力社員の発言が問題になっている。野田首相は意見聴取会から電力会社の社員を排除する方針を表明し、中部電力は「不適切な発言」があったとして、この課長(岡本道明氏)を注意処分にした。彼はそれほど不適切なことを言ったのだろうか。


報道によれば、彼の発言はおおむね次のようなものだ。政府の示す「原発依存度」の3つの選択肢について「個人的な意見として、原発をなくせば経済や消費が落ち込み、日本が衰退する」として「20~25%」を選び、「原子力のリスクは過大評価されている。(福島第一原発事故で)放射能の直接影響で亡くなった方は1人もいない。今後、5年10年たってもこの状況は変わらないと思う」と述べたところで、会場から野次が出て聞こえなくなった。

会社が注意したことでもわかるように、これは中部電力の見解ではない。その前に仙台で行なわれた意見聴取会では、東北電力の社員が「会社の見解」を述べる場面があったが、これは一般からの意見聴取会なのでおかしい。しかし岡本氏は抽選で選ばれ、「個人的な意見」と断っているのだから、彼の意見表明は憲法に定める表現の自由であり、それを妨害する権利は首相にもない。

もし彼が「私は原発には反対で、ゼロにすべきだ」と言ったら、どうなっていただろうか。朝日新聞などは「勇気ある発言だ」と賞賛したのではないか。しかし今の状況で「原子力のリスクが過大評価されている」という彼の発言には、それよりはるかに大きな勇気が必要だ。そしてGEPRをみればわかるように、世界の科学者の圧倒的多数は、岡本氏と同じ意見なのだ。

福島で放射能による死者は出ていないし、今後も出る可能性はない。これは日本でも多くの専門家が述べている事実であり、それを批判するなら科学的なデータをあげて批判すべきであり、電力会社の社員だからという理由で排除すべきではない。それが民主主義のルールである。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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