集団的自衛権に就いて考える

山口 巌

松本氏のアゴラ記事、待ったなしの「集団的自衛権」 を拝読。集団的自衛権が違憲か合憲かの判断は専門の憲法学者に委ねるとして、この記事の中身や結論には深く共鳴する。


松本氏が、今回記事にて訴えたいとされているのは下記と理解している。

そして、それを実現する為にどうしても必要なのが、一にも二にも、「集団自衛権」をベースとした「集団(ネットワーク)安全保障体制」の確立なのだ。もはや躊躇している時ではない。これには別に憲法改正が必要だとも思われないので、直ちに第一歩を踏み出すべきだ。

確かにその通りなのだが、具体的に、誰が?、どの様にして?、第一歩を踏み出せば良いのであろうか?

何度もアゴラで指摘した経緯があるが、日本の戦後政治の伝統は所管官庁への「案件」、「課題」の丸投げである。仮に、ハードパワーである軍事(自衛隊)で自己完結可能なら、防衛省に丸投げ出来るかも知れない。

しかしながら、「集団的自衛権」のネットワークをアジア諸国と構築するとなれば、「軍事」とコインの裏表の関係にあるソフトパワー、「外交」の活躍なしには難しいであろう。外務省の出番と言う事になる。

「外交」の目に見える成果としてODAの成功が思い浮かぶ。ODAに依って建設されたインフラを活用して、現地に進出した日系企業が生産を行い、通商を活況化すると言うのが理想である。国内製造業の現地進出を支援する為の有効な施策、「融資」や「税の優遇」は財務省の所管である。

従来の政府の仕事の進め方、詰まりは、「案件」を「所轄官庁」に丸投げするのでは、各省が「省益」に捉われ話がちっとも進展しないのではと危惧する。

矢張り、一昨日のアゴラ記事、民主党政権の次に来るもの で説明した通り、「政治主導」や「わが国の統治構造の変革」が必要条件になると思うのである。

とは言え、改めて言うまでも無い話であるが、日本の政治の現状はお寒い限りである。外務大臣、財務大臣に就いて書かれた、週末のブロゴス記事二件を下記参照する。

【佐藤優の眼光紙背】玄葉光一郎外相の訪露と犬外交 に依れば、秋田犬の付録として玄葉大臣がロシアに出張するとの事である。これでは話にならない。

「財政危機の経済学」知識がゼロの安住淳財務相も今更ながら安住大臣の迷走ぶりを説明している。時間のある方は、YouTube、参議院 特別委員会 中村哲治をご自分で視聴されたら良いと思う。

私は、昨年11月の迷走の止まらぬ安住財務大臣や、今年2月の迷走の止まらぬ安住財務大臣(続編) で同様指摘した経緯があり、最早何を聞いても驚かない訳であるが、これはこれで問題であろう。

「集団的自衛権」を前に進める為には、結局迂遠な様であっても「政治の質」を高める以外可能性は無いのではないか?

具体的には、「優秀な人材を政治の世界に招き」、「有益な経験を積ませ」、「公平に選別し」、「要職に登用する」と言う、当たり前の事を、愚直にやり続けるしか方法はないのではと思う。勿論、その為には「システムの構築」が必要となる。

政治に人材を得る事無く、それでも遣り繰り出来た幸せな時代は過ぎ去ったと言う事を、国民は理解すべきであろう。そして、その結果としての弊害を、小沢vs反小沢の如く「属人化」、「矮小化」し、問題の本質から逃避するのも、もうやめるべきと思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役