ソフトバンクにコケにされた電波部

山田 肇

ソフトバンクがイーアクセスを完全子会社化すると発表した。このような形で900MHz帯と700MHz帯の両方をソフトバンクが手に入れるのは、公正なことなのだろうか。

900MHz帯免許はソフトバンクとイーアクセスの争いになったが、電波監理審議会は、電波のひっ迫を理由に、2012年2月にソフトバンクを選定した。次いで700MHzが争われたが、ソフトバンクが免許を求めないと宣言したため、電波監理審議会は無競争でドコモ、AU、イーアクセスに免許を割り当てた。2012年6月のことである。


もし、6月より前にイーアクセスが子会社化されていたら、免許の割当て方針は違っていただろう。3社に与えるために、帯域幅を無理やり10MHzに減じる(後々、通信混雑を招く)必要もなかった。プラチナバンドでの免許の割当てが済んだ今は、子会社化を発表するのに絶妙なタイミングなのである。

子会社化を実行するには株主総会と公正取引委員会の承認が必要と、報道発表には書かれている。しかし、そこには電波監理審議会への言及はない。すでに免許を割当ててしまったので、手も足も出せないとソフトバンクに見透かされているのである。

電波部は、電波監理審議会を隠れ蓑にして、比較審査方式で免許を割当ててきた。その結果、わずか1年以内に、ドコモ・AUに比べ2倍以上の帯域がソフトバンクに割り当てられることになった。これでは、比較審査方式は公平とは言えない。だから、我々はオークションの導入を求めてきたのである。これほどコケにされても、電波部は比較審査方式に固執するのだろうか。

山田 肇 -東洋大学経済学部-

追記:この記事はソフトバンクを批判するために書いたものではありません。ソフトバンクはよい買い物をしました。問題は電波部。霞が関の机の上で公平とか、競争促進とか、工夫したつもりでも、市場の急激な変化には追い付けない。だから、裁量行政は止めるべきです。