総選挙への期待(その1)― 政策「踏み絵」を歓迎する!

北村 隆司

選挙前の離党ラッシュは、民主党に取っては、寄生虫退治の駆虫剤の役割を果たしてくれた朗報で、党内から不純物を除去する政党浄化への第一歩でもあり、国民にとっても歓迎すべき現象である。
決められない政治の原因は、ねじれ国会だけではなく、自分の利権や権力に悪影響があると思うと,後ろから狙い撃ちする政党内狙撃兵の存在も大きい。


「城」は中から崩れると言うが、今回の民主党の崩壊はその典型で、「党内議論の場では反対しても、機関決定には最後まで従う」と言う「政党政治の基本ルール」が守られて来なかった事にある。
その民主党が、今回の選挙では公認の条件として、機関決定厳守を誓約書に書かせるそうだが、大いに歓迎したい。今回の選挙には間に合わないが、次回国会では「比例当選者」の党籍変更は自動的に議員失格する制度を法定化して欲しい。
民主党内には、消費増税やTPP推進への反対を明確にしている鳩山元首相を公認すべきではないとの声も出ているそうだが、全くその通りである。
首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の推進を公認の基準とするそうだが、国民に民主党の指針をわかり易く示す物として、これも歓迎したい。
民主党に限らず日本の各政党が「日本維新の会」の方針に刺激を受けて、政策中心の政治集団に純化して行くとすれば、日本の未来も開かれる。
内憂外患の日本には、不退転の決意を貫く指導者も必要である。今の日本には、選挙や政局に詳しい政治家は必要ではなく、振り返って見ると、マスコミの好む政治センスに劣る野田首相の様な人物は、国民にとっては貴重な存在であった。
利権を巡る烏合の衆と化した現在の政党を、本来の政策結社へ変えるには、消費増税や環太平洋経済連携協定(TPP)推進など、必ずしも国民に受けない政策を掲げて国民を説得する指導者は欠かす事が出来ない。
民主党と対立している筈の、日本維新の会の松井幹事長が報告した「太陽と合意した基本政策」では(1)消費税の地方税化や道州制の実現(2)環太平洋連携協定(TPP)交渉参加(3)新しいエネルギー需給体制の構築をその筆頭にあげおり、政策的には「日本維新の会」の政治姿勢は民主党に一番近いとすら思える。
選挙結果によっては、民主党、みんなの党、日本維新の会の連合による、統治機構の抜本改正も夢ではない。
マスコミでは、日本維新の会と太陽の党との合流を政治理念や基本政策を棚に挙げた、選挙目当ての合流で、有権者の政治不信を増幅させるだけだと言う見方が多いが、果たしてそうであろうか?
確かに、両党の原発政策、消費税、環太平洋連携協定(TPP)など重要政策面で大きな隔たりがあった事は事実である。
一方、両党が協議した結果、太陽の党は日本維新の基本政策をほぼ全面的に受け容れ、機関決定したこの基本政策に従うと弁明した事も事実で、この合流は、政策の相違の棚上げではなく、太陽の党の政策変更と受けとめるべき性質の物で、何処に問題があるか私には理解できない。
問題があるとしたら、「真正保守」を自称した「たちあがれ日本」のメンバーの変心であって、これは飽くまでも政治家個人の信条の問題で、政党の問題ではない。これ等「真正保守」を名乗っていた議員が、当選後に又変心する様なら、党からの除名するのは勿論、議員も辞職させる担保をとっておくべきだ。

国民が野合を嫌い、政策中心に纏まる政党政治を希望している事は、日本維新の会が松野前衆議院議員などの無節操な陣笠代議士を迎え入れて以来、人気が急落した事でも明らかで、国民が「太陽の党」との合流を野合と見做したら、維新の会の将来はない。

外憂内患の日本には、規律ある政策政党と共に、気骨ある指導者を必要としている。

その点、安部自民党総裁のお坊ちゃん独特のひ弱さには、又もや失望させられた。

「約束を守らない嘘つき首相」と繰り返し野田首相を非難していながら、突如、首相が解散時期を明言して、提示した条件の即時受け入れを迫られて慌てふためいた安部総裁の姿は、みっともなかった。
このひ弱な人が首相の座に就いたら、緊急時に想定外を繰り返す安部総裁の姿と後手、後手振りが目に映り、挙句の果て、又「腹痛」を起こして辞任においこまれるのでは? と言う疑念が湧いた。

国民も安部総裁の指導者としての欠格性を見抜いたためか、党首討論後には野田内閣の支持率が回復したと言う。

国民も今回の総選挙の選択基準として、公認候補に政策の厳守を求める踏み絵を課さない政党には投票しないなど、利権に群がる寄生虫政治家を追放する決断を下す時期である。

2012年11月20日
北村 隆司