地方公務員の将来は限りなく暗い

2013年01月26日 15:25

ここ数日駆け込み退職の話題がネットを賑わしている。知らべてみたら何の事はない、早く退職した方が貰える退職金の額が多いので慌てて退職したというだけの話の様である。

地方自治体の意図は多分別の所にあるのだろうが、結果的には民間企業の「早期退職優遇制度」と同じ事である。早く退職した方が有利だからそうした。それだけの話である。


しかしながら、私が興味を引かれるのは地方公務員がこんなにもあっさり早期退職に応じる事実である。彼らの頭の中にあるのは「保身」と言う一言ではなかったのか? 言い換えれば、公務員と言う「身分」にしがみ付くと言った方が判り易いのかも知れない。

高度成長時代は民間企業も同じ様なものであった。一流大学を卒業しておれば、余程ヘマをやらかす様な事がない限り部長位にはしてくれた。

部長になれば、適当な時期に本部長補佐とか本部長代理といった実態はないが取敢えず世間体の良い窓際に回され、子会社、関連会社に取締役や運が良ければ専務や常務で押し込んで貰えたものである。

しかしながら、民間企業はバブル崩壊以降様相が一変した。昨年末話題となった、Panasonicの追い出し部屋の如き状況も今や見慣れた風景でしかない。

民間企業がこういう惨状であっても、公務員は別だと言う理屈で何とか彼らの既得権益である、公務員と言う「身分」を死守しようと頑張って来たはずである。まるで、民間企業と公務員の間に眼に見えない堤防を築くが如く。

別に洪水によって、堤防が破壊された訳ではない。民間企業に溜まった水が少しづつ浸潤して公務員の側に到達してしまった。そんな状況をイメージするのである。

退職金が多く貰えると言う判り易い理由があるにせよ、公務員が自分の意志で退職するという事実に「パラダイム」の変化を感じる。

地方公務員の将来は限りなく暗いと思う。彼らもそれを予感しており、「勝ち逃げ」の出来る幸せを噛み締めつつ、少しでも有利な経済条件を求め退職に至ったのではないのか?

暗い将来の第一の理由は、彼らの「稼ぎの場」への関与が限りなく減少する事である。

高度成長時代であっても地方公務員が自ら稼ぐ事はなかった。しかしながら、企業が企業活動をストレスなく行うための「インフラ」を整備し、提供した。

従業員が安全、快適に生活するための全てを提供したのも今一方の事実である。子供が誕生すれば、市立の幼稚園、小学校、中学校、そして県立の高校が子供を預かり教育を提供してくれた。

これがあったから、父親は早朝から深夜まで働く事が出来、母親もパートに出て子供達の将来の学資を稼ぐ事が出来た。

地方行政は「コストセンター」ではあったが、企業や従業員の稼ぎに大きく貢献して来た訳である

しかしながら状況は一変した。元気の良い製造業は廉価な労働力を求めベトナム他のアジア新興産業国への移転を加速する。有能な従業員も企業と一緒に出て行ってしまう。

企業も従業員も二度と日本の地方行政に依存する事はないのである。そして、結果として地方行政は「稼ぎの場」への関与を失い、本当の「コストセンター」になり果ててしまう。

第二の理由は、税収が減り続ける事である。当たり前である。稼ぎの主役たる元気の良い企業と有能な現役世代が連れだって海外に出て行ってしまうのである。

結果、「法人税」、「市民税」が減少するのは必然である。地方交付税も、これからは以前の如く気前良く振る舞われるとはとても思えない。

最後の理由は、どう見ても日本の地方行政が成功しているとは思えない事実である。今から二年前のアゴラ記事、日本の地方都市 で病巣を説明した積りである。勿論、私がこんな記事を書いた所で何かが変わる訳ではない。

彼らは就職と同時に定年までの職が終身雇用、年功序列の慣行に拠り保障され、更に在職中巧く立ち回れば定年後の天下りの職にありつけるかも知れない。例えありつけ無くても民間に比べれば驚く程恵まれた年金の受給は保障されている。

元々、若くしてそういう人生のコースを選択した人達だから只管「税金」を食い尽くす事に何ら疑問を感じる事も無いのであろう。彼らに取っては現行制度の維持こそが全てなのだ。例え、国家財政が破綻しようともである。

地方行政の抜本改革は待ったなしではないのか?

それでは一体如何なる改革が望まれると言うのであろうか?

その一丁目一番地は地方公務員労働生産性の向上である。多分彼らはこんなテーマ一度も考えた事がないのだと思う。

あなたは適正に働いているのか? と質問したら、きっと「そうだ」と答えるに違いない。そして、その理由を尋ねれば、「自分がそう思うから」。これでは埒が明かない。

判り易く面白いデーターがある。

私は横浜市民(都筑区)であるが、横浜市の人口は370万人。一方、大阪市の人口は270万人に過ぎない一方、市の職員数は横浜市が2.8万人。これに対し大阪市は3.9万人もいる!

大阪市の市民一人当りの職員数は横浜市の二倍と言う事になる。

勿論、市が提供するサービスの外部委託の比率とか精査の必要があり、大阪市の職員が横浜市職員の半分しか働いていないと拙速に断言する積りはない。

しかしながら、大阪市の財政が良好であれば兎も角(実際は非常に悪い)、二倍と言う数字が看過出来るものではない事は明らかであろう。

繰り返しとなるが、法人税、住民税の減少が不可避であり、地方行政は待ったなしで業務の洗い出しを行い、民間に外部委託可能なものは極力委託する等して、職員を大幅に削減し人件費を減らす必要がある。

それ程遠くない将来、地方行政は財政破綻回避のため、相当大がかりなリストラや公務員の昇給停止に踏み切らざるを得なくなると推測する。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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