増税と巨大な政府支出により社会主義化する日本

藤沢 数希

安倍内閣は、2012年度の補正予算として20兆円以上もの緊急経済対策を発表している。リーマンショック直後の異例の緊急経済対策を除けば、史上最大の規模となる。これによりGDPを2%引き上げ、60万人分の雇用を生み出すという。こうした補正予算を含めて、29日午後に、政府は2013年度一般会計予算案を決定したが、とにかく財政出動で、景気対策をすることに重点を置いている。しかし、こうした財政出動による景気浮揚効果はコインの表側を見ているに過ぎない。コインの裏側は、最大規模の赤字国債の発行である。国債発行とは、将来の税金の先食いに過ぎない。そして、こうした財政出動は将来の景気の前借りなのである。いったい誰がこのつけを払うのか? いうまでもなく将来の納税者である我々だ。さらに驚くべきは、その中身だ。


まずは、作年末に公的資金で日本の電機メーカーの工場や設備などを1兆円買い取る、という恐るべき政府の方針が発表された。エコカー減税、エコポイントなど、日本の製造業への補助金は過去にも幾度となく行われたが、これほどあからさまな補助金など前代未聞だ。エコポイントなどもあからさまだったが、そこには環境問題という、市場原理だけでは解決できない問題に政府が介入するという、わずかな正当性はあった(実際は不必要な買い替えを施し、こうした産業廃棄物によって環境問題はさらに悪化した)。しかし、こうした過去の政府による補助金は、必要なリストラなど問題点を先送りして、レントシーキングを誘発し、結局、日本の製造業の問題を大きくしたのは今となっては明らかだ。

そして、緊急経済対策では、国際協力銀行による日本企業の海外進出に投資するファンド、日本政策投資銀行が異業種連携などの新事業創出に投資するファンドなど、多くの官営ファンドが並ぶ。もし、それが経済合理的であれば、政府が税金でそんなことをしなくても、民間のファンドが自らの利益のために自ずと投資するのである。このような業務に公務員が関わり、国民の税金をリスクに晒す正当性は皆無である。この国はいったいどうしてしまったのだろうか。

つい最近も、経営危機に陥った半導体大手のルネサスエレクトロニクスに、世界のトップクラスのプライベート・エクイティ・ファンドのKKRが買収を提案していたのだが、なんと政府が邪魔して、産業革新機構が税金を使い、カスタム半導体を安く仕入れたいトヨタ自動車やパナソニックなど国内企業と協力して、救済することになってしまった。これほど資本主義の原理原則を無視した茶番劇もなかろう。

日本航空がつぶれた時は、当然のように外資系のLCCなどに切り売りしていれば、日本では高止まっている国内航空券が大幅に値下がりして、日本国民は大いにその果実を享受するはずだったのだが、これも税金で国営化された。そして郵貯や簡保という、世界最大級の銀行や保険会社が、日本では未だに官僚に経営されているのである。

さらに奇妙なことに、政府が財政出動しなければいけないほど景気が落ち込んでいるというのに、政府は同時に次々と増税案を打ち出している。来年度から段階的な消費税アップがはじまり、高額所得者への累進制も強化される。これはアクセルを踏むと同時にブレーキを踏むという、非常に奇妙なマクロ経済政策になっている。仮に政府が主張するように、現在、景気対策が必要な状況ならば(筆者はそれは疑わしいと思っているが)、市場原理を歪めない形でやるべきであり、その唯一の方法は、減税なのである。これほどばら撒く金があるならば、所得税の最高税率、法人税率の引き下げなどを実行すれば、どれほど日本の国際競争力が回復するのかを考えれば、これから政府がやろうとしていることは、まさに金をドブに捨てるようなものであることが明白である。

こうした政府支出の肥大化と増税は、非効率な政府をさらに大きくし、民間の活力を削いでいくことは明らかだ。官僚が金融機関やファンドを運営するなど、もはや日本は社会主義国に成り下がったとしかいいようがない。筆者は、日本が大変に間違った方向に進んでいると危惧している。目先の株高に喜んでいる場合ではない。