変わる大学図書館

林 良知

成蹊大学の図書館がネットで話題になっている。

NAVERまとめ「どこの未来都市?成蹊大学の図書館がとんでもない事になってる」は、2月16日時点で15万回以上閲覧されている。
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成蹊大学HPによると、この図書館は成蹊学園創立100周年記念事業の一環としてフランス・ニューポンピドーセンターの設計コンペで1位を獲得した坂 茂氏と三菱地所設計が共同で設計し、2006年09月の開設以来、大学のシンボルのひとつになっているということである。

私も見学させてもらったことがあるが、図書館内に、「プラネット」と呼ばれる5つの球体型閲覧室を設置していて、まるでSF映画に出てきそうな世界である。

外見だけではない大学図書館の変化

ネットでは、図書館の外見に注目が集まっているが、その本質は機能面にある
プラネットは、ゼミ発表に備えたグループ研究などに使うことができる学習スペースであり、大学の学習支援機能の重要なピースとなっている。

私が学生の頃の図書館は試験前に一人で勉強をしたり、本を読んだり、もしくは体に休息を与える場所であったが・・・図書館も多様な学習に対応するために機能を進化させている。

このような大学図書館の変化は、平成22年12月 文部科学省から出された、大学図書館の整備について-変革する大学にあって求められる大学図書館像- において次のように表現されている。

大学図書館は、大学における学生の学習や大学が行う高等教育及び学術研究活動全般を支える重要な学術情報基盤の役割を担う機関の一つとして位置づけられ、その機能として、学習支援及び教育活動への直接の関与が求められる。

先進的な取り組みをする大学図書館

成蹊大学の他にも特徴的な機能を備えた図書館が次々とオープンしている。
その中でも明確なコンセプトのもと、学生の勉強意欲をかきたてているいくつかの図書館を見てみたい。

国際教養大学図書館  
     -24時間眠らない図書館-

  • 開館日2008年3月
    蔵書数約7万冊
    閲覧席数300席
    開館時間学生・教職員は24時間、365日利用可

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代々木ゼミナールの2012年度大学難易度一覧で、2次試験の偏差値は66(参考:東大文I71、 京大法学部が69、東北大法学部64(全て前期))、就職率100%など何かと話題が多い大学であるが、大学図書館として最初に世の話題をさらったのもこの大学であった。

国際教養大学の図書館は、24時間365日、眠ることなく在学生や教職員スタッフを受けいれており、デザインは、「本のコロセウム」をテーマとし、天井高12メートル、半径22メートルの半円ホールは、秋田県産のスギが使われている。6本の支柱が天井を支える伝統技術を生かした傘型の梁は、木材の美しさを強調し、そのあたたかみを利用者に感じさせる繊細で深遠な空間となっている。

「学生にいつでも勉強する場を提供したい」、国際教養大学のそんな想いが、この図書館には込められているということである。(国際教養大学大学HPより)

明治大学和泉キャンパス図書館  
   -入ってみたくなる図書館-

  • 開館日2012年5月
    蔵書数約34万冊(全体:約231万冊)
    閲覧席数1,227席
    開館時間8:30~22:00(約330日) ※日によって異なる

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コンセプトの「入ってみたくなる図書館」の名のとおり、図書館らしからぬスタイリッシュな外観に、ホテルのラウンジのような開放感にあふれた館内で、図書館にはカフェも併設されていて、コーヒーを飲みながらゆっくり読書を楽しむ事もできる、快適な環境を備えた“滞在型図書館”である。(2012年4月26日プレスリリースより)

立教大学池袋図書館  
   -本気で勉強したくなる図書館-

  • 開館日2012年11月
    蔵書数約150万冊(全体:約176万冊)
    閲覧席数1,520席
    開館時間8:45~22:30(約330日) ※日によって異なる

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中央図書館エントランス部には「ラーニング・スクウェア」が設置され、個人学習とともにグループ学習に適した環境づくりがなされ、 個人またはグループのために柔軟で機能性に優れた空間が用意されている。レポート・論文の書き方のアドバイスをするラーニングアドバイザー(大学院学生)の常駐(授業実施期間のみ)、300台の貸し出しノート型PCの用意など充実した学習環境が整備されている。(立教大学HPより)

立教大学図書館のある職員は私のインタビューに対して、

「ラーニング・スクウェアはいつも学生で溢れていて、ホワイトボード、パソコンを利用し活発な議論が繰り広げられている。これを見て、学生はきっかけ(学習環境)さえあれば勉強するのだと感心した。学生の勉強している姿が可視化されることにより、他の学生の刺激になると共に、教職員の仕事へのモチベーションにもなっている」

と語ってくれた。

大学図書館の未来

このような大学図書館の変化は、突き詰めると大学教育の変化によって引き起こされているといえる。

グローバル化や情報化の進展、少子高齢化等、社会の急激な変化、大学全入時代による学生の質の変化等により、大学はアカデミックな専門性のある教育を行うだけではなく、学生が社会性を身に付けるための教育を行うことが求められている。

そのために、各大学では、産業界、行政機関、地域団体などと協力し、PBL(project based learning)、サービスラーニングなどのプログラムが開発され実施されている。

これら新しい大学教育をより効果的に進めるため、また、平成24年8月28日に中央教育審議会により取りまとめられた、「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」で課題として上げられたアクティブラーニングの推進、学生の学修時間の増加・確保を目指すために、学生が自律的、自発的に学習する機能を持つ図書館が注目されているのである。

PBL型授業の中で世界の様々な問題が課題として設定され、世界中の大学と3DTVでネットワークを結び、海外の学生と英語で議論をしたり、地元住民と地域課題の解決策について検討したりと、グローバル、ローカル、様々な人々が大学図書館に集い活発な議論を行う姿が至る所で見られる日は近いだろう。