私は2010年、アゴラに「 『ゆとり』学生諸君、目を覚ませ!」という記事を寄稿させていただき、皆様からの様々なご意見を頂戴することができました。前回の記事でも「ここ数年、日本の教育にどっぷり浸かった『ゆとり』世代の日本人学生たちの能力は大きく二極分化しています。少し前では考えられないくらい幼児化した学生が激増する一方、ほんの僅かの学生だけが国際的に通用する力を身に着けつつあるように思えます」と、二極分化について指摘をしました。
池田信夫先生が「日本の大学は、すでに「裏口入学」だらけになっている。海老原嗣生氏が指摘するように、早稲田の政経でさえ一般入試は40%。私立大学の半分は定員割れで、当然ながら入試なんかない。慶応は昔から情実入学で知られている」とご指摘のように、大昔は「エリート」とされていた早慶レベルの学生さんでも、優秀な方とそうでない方の二極分化が激しく進んでいるように感じます。
昨年春、私は、アジアのVIPが集まる国際会議に参加しました。私が、就活を考える現役大学生の前で講演をしたり、大学主催のパネルディスカッションのパネリストを務めたりしたのは、その約2年前が最後でした。直接、現役大学生と意見交換をする機会が2年ほどなかったものですから、最新の大学生事情について知りたいと思い、国際会議の会場で出会った、日本人大学生らしきグループに声をかけました。 彼らは全員、名刺を持っており、その名刺には「亜細亜大学 アジア夢カレッジ 7期生 ~キャリア開発中国プログラム~ ○○学部 氏名 住所 電話番号 E-mailアドレス」が書かれていました。国際会議に参加されていたのは、全員3年生です。
アジア夢カレッジ(夢カレ)の学生さんは、亜細亜大学入学後、中国語試験に合格し、2年次に5か月間ほど大連で現地教育及びインターンシップを経験するそうです。物怖じせず、世界を股にかけて活動したいという情熱を感じました。今後、中国だけでなく、様々な国で通用する国際人になる方々であるとお見受けしました。
11月には、ポケットマネー買った新幹線回数券を夢カレの学生さんに送り、 私が取締役を務める会社(製造業)に来ていただきました。この会社は、従業員が30名程度であり、離職率が極めて低いので、毎年新卒採用を行うわけではありません。社内を見学いただいた後、採用とは無関係に意見交換をさせていただき、実りある議論ができました。
「都落ちするのは抵抗があるかも知れないが、国際展開を進める穴場の中小企業も、探せば結構ある」というアドバイスをいたしました。高崎の”gelate” ジェラートや白衣大観音からの眺望、上州名物 焼きまんじゅうも気に入っていただけたようでした。 12月には西澤正樹教授のご厚意で、学生さんたちの前で1時間ほど、完全にボランティアで講演をさせていただきました。演題は「衰退する日本と心中しないために」としました。
内容は以下の通りです。
- 学生が就職に失敗する理由
- 多くの日本企業に潜む、やる気のある若者を潰す罠
- メディアリテラシー(広告宣伝費の多い会社による世論操作を見破る)
- 入る価値のある中小企業の共通点
- (逆に)敬遠したい中小企業の共通点
シューカツ前にすべきこと
後日、聴講された学生さんたちによる感想文が、まとめて送られて来ました。紙幅の関係上、具体的な内容の紹介はできませんが、涙が出るほど嬉しかったです。皆さんにお役に立てた喜びを感じました。
また、理解できない点について率直に指摘していただいたことは、今後の講演に際し、どの程度まで噛み砕いて伝えるべきか、参考になりました。 「ゆとり世代」で検索すると、彼らに否定的な見解を述べたサイトが多数見つかります。
彼らは、小泉構造改革の効果が出た一時期を除き、ずっと不況の世の中を生きてきました。戦争を生き抜いた逞しい世代が戦後日本を立て直した流れに乗り、一時期は暴力的な反抗を試みたものの、結局は「社畜」になった団塊世代とはわけが違います。 「自己チュー」高齢者の跋扈により、社会の多くの矛盾が若者に押し付けられ、先輩たちが次々に「就活自殺」で散ってゆく中、生きぬいてきた逞しい世代なのです。高度成長期に特化されすぎた有効期限切れの社会制度に従順に従うつもりはまるでなく、これ以上若者を虐げるなら日本を出て「ねずみ講」を続ける高齢者を見棄てることも厭わないと感じます。 「草食系」の「そ」の字もない、将来が楽しみな若者たちに出会えて、私は元気をもらいました。彼らが社会人になった後も、末永く助け合っていきたいと思います。
長井 利尚
長井アソシエイツ Managing Director