ITの利用拡大が求められる日本 --- 中村 伊知哉

2013年02月19日 12:13

先週(2013年2月10日の週)はスゴい週でした。
結構考えさせられるITやデジタルのニュースが相次ぎました。特に、政策屋としては、事業政策・提供政策よりも、ユーザ環境を整えるための利用政策が大事になっていることを強く認識させられました。少々ピックアップしてみましょう(URL、リンク切れを恐れず貼り付けます)。


2/12 「授業用タブレット全小中学生に配布 東京・荒川区」日本経済新聞
荒川区西川区長が2014年度に一人一台を達成する考えを表明しました。デジタル教科書・教材協議会(DiTT)の目標とする2015年を上回るペースです。このため、2013年度には3校でモデル事業を始めるとのこと。DiTTとしても協力します。
これに先立ち、大阪市の橋下市長が2015年に全市で展開することを宣言していました。これで東阪が揃いました。DiTTの目標は無謀とされてきましたが、佐賀県武雄市など熱心な首長も宣言してくれれば、全国2015年目標も夢ではない。
自治体主導、現場主導で進めていきたいと思います。

2/13 「日本は韓国のIT化に追いつけるか」IT Pro
東阪ががんばっても、韓国の教育情報化スピードには及びません。この記事では、韓国が行政、医療、教育、地域活性化など、従来のサービスを大きく変革するためにITを駆使していること、国民には13桁の国民IDが設定されていて、インターネット経由で簡単に各種の手続きができることが記されています。一方、日本はマイナンバーも実現しません。問題は技術やビジネスより、IT「利用」の遅れです。
  
2/14 「TV番組の海外転送サービス、著作権侵害と確定 最高裁」朝日新聞
最高裁がNHKと民放9社の著作権を侵害したと認め、2業者に賠償とサービス差し止めを命じた昨年1月の知財高裁判決が確定しました。日本ではクラウドサービスがやりにくいことは明白になったのですが、それで訴えた側にメリットはあるのでしょうか。国内クラウドを潰して利するのはYouTube、Apple、hulu・・。結局、コンテンツビジネスを守ることになるのか、プラットフォームを奪われることになるのか。日本のテレビは得失をどう計算しているんでしょう。・・これも利用政策ですね。
なお、8日には、「英BBCがTV放映前にネット配信へ」というニュースもありました。もうテレビ番組のネット配信じゃなく、コンテンツのマルチチャンネル化です。日本放送協会も日本メディア協会に改名する時期でしょうか。

2/14 「災害時のデジタルサイネージ運用ガイドライン策定へ」IT Pro
デジタルサイネージコンソーシアムは、鉄道や不動産、小売など会員企業と災害時ガイドラインを策定します。「デジタルサイネージ・ユーザーズ部会」(イオンアイビス、NHKエンタープライズ、シブヤテレビジョン、JR東日本ウォータービジネス、ジェイアール東日本企画、タリーズコーヒージャパン、三井不動産、三菱総合研究所、森ビル)が担当。これも利用政策なんですよね。

2/15 「ネット選挙解禁 懸念克服して育てたい」東京新聞
 東京新聞の社説。トットとやってくれ、と唱え続けてきたネット選挙は形が見えました。2009年の総選挙にて、民主党がIT政策として唯一マニフェストに掲げていたのですが、実現しなかった代物です。典型的な利用政策です。トットと願います。

2/16 「薬ネット販売 過剰な規制はやめよう」朝日新聞
朝日の社説。最近、朝日がネットに前向きです。
処方箋のいらない医薬品を、インターネットや電話を使って通信販売することの当否や、そのあり方を検討する会議が厚生労働省につくられたことを受けての記事です。
これもネット利用政策。司法に仕切られたわけです。いかに行政が利用者のほうを向いていなかったか。

2/16 「診断ソフトの販売解禁 政府、1兆円市場へ参入促す」日本経済新聞
薬事法を改正し、「いまはパソコンなどに組み込んだ場合のみ医療機器として認可しているが、ソフトだけでも認めるよう改め、パソコンとは別に販売できるようにする。診断ソフト市場を創設して多様な企業の参入を促し、医療の技術革新と効率化を進める。」んだそうです。
先週はこれが一番ビックリしました。不勉強で、知らなかったんです。ハードに組み込んでないと認められない現状をソフトだけでも販売できるようにする、って・・・そんな規制、まだあったのか。アメリカに15年遅れって。一体だれが得をした規制だったんでしょう。
ここまで放置されていたということは、民間サイドからも強い問題提起がなかったということでしょうか?デジタル教科書を正規教科書にするための法改正をぼくらはいま求めていますが、それは去年まで民間サイドからなかなか言い出せませんでした。行政を恐れて縮こまる空気の問題です。そういうドンヨリしたものがまだ漂っているのだとすると問題。空気を換えよう。

2/16 「小売り、ネット通販1兆円 アマゾンに対抗」日本経済新聞
小売り40社のネット通販売上が13年度は1兆円との記事。総売上に占めるネット比率が4~5%になると。スマホとクラウドが後押しするんですね。
ぼくは以前、2007年に1.5%だった小売りネット化率を、2015年に5%にしようという政府目標を提案したんですが、却下されました。実現性に乏しいと見られたんです。でもこのペースなら、行けるかもしれません。実に感慨深い。だって、政府は不要だったんです。

教育情報化、著作権、災害ガイドライン、ネット選挙、医薬品販売、ネット通販。
いま手を入れるべきIT・知財政策のトピックが一気に噴出しました。偶然ではないんでしょうね。金融緩和、財政出動に並ぶアベノミクスの柱「成長戦略」は、規制改革の旗を立てています。ただ、そこからITや知財の話は聞こえてきません。これに対し、民間サイドでは、医療にしろ教育にしろコンテンツにしろ、遅れた日本のIT利用を広げることをテコにして、経済を刺激すべしという声が立ち上っている、という表れではないでしょうか。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年2月18日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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