マイナンバー制度は、はたしてうまくいくのか

大西 宏

いったん野田政権では廃案となったマイナンバー(社会保障・税番号制度)の導入が閣議決定され、今国会の承認を経て、平成27年1月の利用開始を目指してシステム構築がはじまるといいます。
共産党をはじめとした、またいつものメンバーが反対しているということですが、賛成か反対かということよりも気になるのは誰がシステムを構築するのか、ほんとうにまともにシステムを開発することが可能かです。


住基ネットは導入して10年も経つのに利用者がほとんど広がらないという状況で、国税局のe-taxシステムもなぜこんなものをつくってしまったのかという代物でやはり失敗、さらに日本の産業競争力向上のために欠かせない特許庁のシステムは開発そのものが破綻してしまっています。そのことは、霞ヶ関にはシステムを発注、管理する能力がないことを証明しているのです。

この種の問題は、いつも政治は賛成か反対かの議論にエネルギーを使うのですが、その実現性や実効性を吟味することが、政治の場ではほとんどないような気がします。それは霞ヶ関がやればいいということでしょうか。しかしその霞ヶ関に能力がないとなると、誰が吟味するのでしょうか。外部コンサルタントでしょうか。

霞ヶ関のコスト意識もなく効率性も考えない、またひたすら責任を問われることを恐れる習性は、どんどんシステムを複雑化させていきます。失敗した住基カードがなければ使えないようなe-taxシステムをつくってしまったこともその一例です、特許庁システムも、現行業務の延長でシステムを開発してほしいという、自分たちの業務を変えないことを前提としたために、業務の調査に膨大な時間を費やす結果となってしまったのです。やってはならない開発方法の典型です。目的達成や利用者の目線がないのです。

思い出すのは、社会保険庁から、年金お知らせ便だったと思いますが、アンケートが送られてきた時のことです。職業柄アンケート設計には長年かかわってきた目からすると、アンケート設計があまりにも拙く、新入社員でもこんなひどいアンケートは設計しないだろうというものでした。後にやり直しになったことを覚えている人もいらっしゃると思います。
つまり官僚の業務はできても、それ以外は社会常識もなく、また仕事の能力も非常に低く、システムどころか、アンケート設計すらチェックできない人たちに新しい仕事をする危うさを感じるのです。

情報漏えいの問題が懸念されていますが、もっとも鍵になるのは、システム開発やシステムの運用に関わる内部の人たちの信頼性の問題です。最高4年以下の懲役、または200万円罰則というのもあまりにも甘いという気がします。

特許庁のシステム開発で、特許庁も、東芝ソリューションも知らぬ存ぜぬを貫いていますが、下請けのプログラマー派遣会社が山口組傘下のフロント企業を使っていた疑いがあることが報道されていました。さらにそこに建築業界と同じように政治家が絡んできます。

日本の場合は、システムのゼネコンに発注されますが、ほとんどが建築業界と同じように、下請け会社からの派遣をつかってシステムがつくられていきます。プログラム開発は人数が少ないほうが効率的で質のよいものができるというのが常識ですが、ITゼネコンは工数で見積もるために逆方向にむかっていきます。

さてマイナンバー制度のシステム開発ですが、すでに、内閣官房のホームページで、情報提供ネットワークシステム等に係る調達手続等支援業務や、情報保護評価書受付機能等のためのアプリケーション等の調達仕様書作成等支援業務の入札公告が掲載されています。
しかし、それよりも先にやるべきことは、どのような思想で、またどのような体制で開発するのか、もっとも重要なのは誰がプロジェクトを仕切り、どのような権限をもたせるのかですが、その人事のほうこそ重要ではないでしょうか。

今回は省庁横断のプロジェクトであり、利権や古い開発体制を刷新するチャンスになればと思いますが、国会では、賛成か反対かよりもさらに一歩踏み込んで、どのようなシステムを、どのように開発するのかの実践的で創造的な議論を深めて貰いたいものです。

マイナンバー制度は、世界のトップをいくような利用者の利便性の向上と業務効率化をはかるシステムづくりを目指してもらいたいのですが、失敗続きの官製システムを考えると日本には無理な制度なのかもしれません。いっそ成長戦略として、アイデアから国際コンペでもやったらどうなんでしょうね。