「就活の時期を遅らせよう」では学生も企業も救われない

2013年03月30日 08:53

アゴラチャンネルでの茂木健一郎先生との対談が終了した。茂木先生と直接話せたことに感謝したい。その場をつくって頂いた池田先生に感謝。視聴者支持率では6対4で負けたことは真摯に受け止める。池田信夫先生のエントリーにまとまっているのでご覧頂きたい。

さて池田氏も倫理憲章廃止を提案する中、本日の日経の社説は『「就活」の開始時期をもっと遅らせよう』というテーマだった。そうきたか。時期「だけ」の議論はムダである。


日経はもともと、3月15日付の朝刊で「政府は企業による大学生の採用活動の解禁時期を遅らせ、大学4年生の4月にするよう経済界に検討を促す方針を固めた」と報じていた。「若者・女性活躍推進フォーラム」という女性や若者の就労促進策を議論する有識者会議によって協議が行われているという。

採用活動の開始時期を大学4年生の4月に、内々定を出す選考活動を8月ごろにすべきだという提言が検討されている。

本日の日経の社説は、この取り組みを支持している内容だと言っていい。

私はこの取り組みは、学生も企業も救わないと考えている。この件については、WEBRONZAで『就活の改善に本当に必要なこと~時期の見直し論繰り返す不毛~』 という記事を書いた。初日にアクセス数1位をとり、翌日も2位だった。ぜひご覧頂きたい。

ポイントは、こうだ。
このうち、いくつかの論点は上記のWEBRONZAの記事の無料コーナーで読めるのでそちらもご覧頂きたい。

1.就活の時期の規制は守られた試しがない。
時期論争は1920年代前後に遡る。日本の就活の歴史は、時期論争の歴史であり、ルール作りとそれをすり抜けるイタチごっこの歴史である。採用活動は企業活動であり、政府がどこまで規制するかは議論が必要だろう。経団連の倫理憲章には罰則規定などがない。さらに企業は守ったふりが上手である。倫

理憲章が改定され2年目になるが、徹底されるどころか、破り方が洗練されている。今年も既に内々定が出ている。経団連企業=倫理憲章賛同企業というわけではない。WENRONZAの記事に書いたが、例えばニトリはすでに夏のインターンシップ参加者に内々定を出しているが(複数名の学生から報告を受けた、具体的な名前もおさえている)、今年度の倫理憲章の賛同企業リストにはない(数年前まではあった)。

経団連は選考を伴うインターンシップを禁じているが、これが青田買いの舞台となっていることも公然の秘密である。実際、昨年と比較して、インターンシップの実施率は上がっている。HR総合調査研究所の「2014年新卒採用 企業採用動向アンケート調査、学生就職活動アンケート調査報告書」によると、インターンシップを実施する企業は徐々に増え、2013年度の27%から2014年度の33%に6ポイント上がっている。そもそも、なぜインターンシップを選考の手段にしないのか。

2.後ろ倒しで学生が救われるわけではない
2011年度採用において、学業などを阻害しないために選考スケジュールを大学4年の夏の時期に後ろ倒しにして賛否両論を呼んだキヤノンマーケティングジャパンは、2014年度新卒採用から、理系のみ選考をやはり大学4年の春にすることにした。理系の場合、むしろ夏に選考をすると研究を阻害するからである。

今度は卒論や卒業研究を阻害することになるが、それはどうなのだろうか(ここは、学部レベルの卒論や卒業研究など無意味と一蹴する人もいるかもしれないが)。

初期段階では有名企業に応募が集中し、他の企業に目が向くのが遅れるという現状の課題もますます加速する(なお、別に私は、大手を学生が志望するのがダメだ、中堅・中小企業などに選ばずに行けという単純な議論をするつもりはない ここは出会い方を丁寧にすることが大事なのだ 後述する)。

後ろ倒ししたことで負担が増したという声は学生からもあがっている。ライフネット生命の「2013年就職予定者に聞く、「就職活動」に関する調査」によると、むしろ後ろ倒しにより負担が増えたという学生が3人に1人程度いる。

また、多くの学生は後ろ倒しをしたからといって、学業に集中するわけではない。なぜなら、別に勉強しても短期的に得するものになっていないからだ。「海外の学生は勉強する、日本はダメだ」論があるが、これは精神論の話だけではなくて、単位認定の厳しさ、大学院進学や就職で学業の成績が関係するかどうかなども影響している。日本の学生の多くは単位が欲しいのであって、優やAをとるために勉強しているわけではない。

ここで大学教育批判をすると感情論になりがちで話がこじれるから、ここではあえてふれない。皆さんにご判断頂きたい。ただ、今のままが良いわけがないことは、先日のニコ生でも茂木氏、池田氏と3人で意見が一致したところである。

時期については遅らせるよりも、前倒しにするのも手である。ファーストリテイリングが取り組み賛否両論を呼んだ、大学1年生にも内々定を出すというやり方はむしろ学業を阻害しないとも言える。企業も内定辞退リスクを持っているのだ。やや極論だが、早期から就活をすることをよしとして、そのかわりに就活をするのは1年生~3年生は休業期間のみというのも悪くない案ではないかと思っている。

※なお、この検討について「有識者」たちが出した資料はなかなか失笑ものもあるので、晒しておくことにする。

時期論争「だけ」では学生も企業も救われないのだ。結局、ルール破りの連鎖にしかならないのである。

違うのだ。

学生と企業の出会い方、若手人材の育て方、雇い方(働き方)を変えなければ意味がない。

出会い方においては、既に動きもあるが就職ナビ依存からの脱却、むしろ選考に関係あるインターンシップの実施(特に学生が不安に思う、しかし多くの学生が就職している中堅・中小企業において もちろんインターンシップは違法労働の巣なので浄化が必要だが)、大学や公的機関の斡旋機能の強化、ブラック企業情報も載ってしまっている求人票や採用広告の浄化などが必要だろう。

育て方においては、大学が機能分化する過程でむしろ職業予備校的な大学・学部を増やすこと、卒業後の公的機関での職業訓練の推進なども検討するべきである。

雇い方(働き方)においては、ノンエリート枠を設置し、給料も役職も一定以上上がらない雇用の枠を設けることによって雇いやすく、働きやすくすることは検討の余地があると思っている。

時期だけの新卒一括採用改革論はそろそろ終わりにするべきだと私は考えるのだ。実際は学業のことなど評価していないのに、良い人ぶる議論も。

いま、必要なのは、ポーズの議論ではなく、むしろぶっちゃけ話なのである。

常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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