ガス改革のアプローチ方法 --- 石川 和男

2013年07月05日 12:00

「ガス改革」をやろうとすると、利害関係がかなり錯綜しているだけに、主要論点を考えるだけでも相当に悩ましい。そういう点では、電力改革は、相手が強大である一方で、考えるだけならばそれほど悩むことはない。ガス改革に関して、より正確に言えば、利害関係は錯綜しているのだが、そこに触れると末恐ろしいことが起こるのではないかという行政当局や業界関係者の思い込みにも深いものがあると思う。


とは言え、どのような課題があるかは出尽くしており、もし本気で「ガス改革」を手掛けようとするのであれば、どのようなアプローチ方法を採るかである。私としては、目標をどこに設定するかから始めるわけだが、それは「需要家利益の増進」であって、「ガス料金の上昇抑制機能を今日的な制度環境で実現すること」となる。

そのために、LNGやLPGの調達部門(上流部門)と流通部門(下流部門)に関してどのような政策的対応があるのか、となるわけだが、上流部門の話は後日に譲って、先ずは下流部門から入っていくのが素直であろう。だから、資源エネルギー庁資料でも、「当面の対応」(下図参照)について、小難しそうなことは、良く言えば中長期的視野で検討していこうとしている(が、悪く言えば単なる先送りで済ませようとしている、と私は見ている。それは悪いことではない)。

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「都市ガス市場では、中小事業者の多さ、LPガス等との競争関係等の特性があり、このような特性を踏まえた検討を行う必要がある」とは即ち、ガス体エネルギー市場には都市ガス、団地ガス、LPガスなど多様な事業者が競合しながら共存しているので、電力改革において電力市場の最大手である電力10社を一方的に攻めるが如く、ガス改革においてガス市場の最大手である大手都市ガス会社を一方的に攻めるわけにはいかない、という趣旨であろうと私は解釈している。

「当面は、制度面では、電気料金制度運用の厳格化を踏まえ、審査基準の明確化や情報開示の拡大等、現行制度の下での見直しを行い、ガス料金値上げの抑制を図っていく」のは妥当な政策論である。“電力システム改革”のような電気料金規制撤廃・総括原価方式廃止といった碌でもない刺激剤は撒き散らさないことを宣言している。これは真っ当な方針だ。もっとも、総括原価の中身を適時適切に見直す仕組みを敷くべきであることは言うまでもない。ガス事業に係る料金制度は、現行の「値下げ届出制・値上げ認可制」が当面最適だ。

「インフラ面では、整備を進めようとする事業者の存在等を踏まえ、競争インフラとしてのパイプライン網整備に対する国の考え方を整理していく」というのは、広域的な天然ガスパイプライン構想のことであろう。この課題は費用負担論が最大の焦点になるが、政治的に実現見通しのつく答えを誰も持ち合わせていないのが実情。私としては、この話は100%消す必要はないが、心の中ではさっさと諦めることをお勧めする。本件は今後とも、審議会やら研究会やらでその名称を変えながら、検討課題として末永く生き続けることになるだろう。

「その上で、電力システム改革の進展等も踏まえつつ、制度面での総合的な検討を行っていく」とは、上図の「ガス事業の自由化範囲の推移」と強く関係するだろう。次の焦点は、「年間10万m3未満」への自由化範囲の拡大である。因みに、私が手掛けた第2次ガス事業法改正では、一般ガス事業の自由化範囲を「年間100万m3以上」に拡大したが、同時に簡易ガス事業の自由化範囲を創設して「年間1000m3以上」とした。 よって、一般ガス事業の自由化範囲を「年間10万m3以上」に拡大するなどというのは、甘ちゃんも甘ちゃんなのだ。交渉料金として妥当な年間使用量の最低線は、現行で既に「年間1000m3以上」となっている。

ガス改革の銃爪(引き金)が簡易ガス事業制度改革にあると私がこのブログで再三再四述べているのは、そういうことに拠っている。


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年7月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。

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