以前、歯科医師の先生から、
「歯医者って、すごく離婚率が高いんですよ」
という話を聞いたことがある。
「夫婦ともにストレスの溜まりやすい仕事だから」といった理由だったと記憶している。確かに、バブルの頃は誘惑が多すぎて、歯科医余りの昨今では経営難と、夫婦仲が悪くなる要素が多い職業なのかもしれない。
では、職業によって離婚率はどの程度異なるのだろうか?
そう思って調べてみたが、なかなか苦労した。
厚生労働省の「人口動態統計職業・産業別調査」に離婚率も記載されているが、年度によって調査対象が異なったりして、何とも分かりにくい。以下は、平成12年の古いデータだが、お許しいただきたい。「標準化有配偶離婚率」とは、結婚している組数に対する離婚率を、年齢構成の差を取り除いた値だという。細かい計算方法は分からない。まあ、難しいことは考えず、職業比較としてだけ捉えることにしよう。
これを見ると、夫の職業で最も離婚率が高いのは「専門的・技術的職業従事者」57.8となっている。どのような仕事かというと、エンジニアのほか、医者や弁護士、教師なども含まれている。要するに、「頭のいい人たち」ということになろう。
なるほど。頭のいい人は離婚しやすいのか。でも、妻が「頭のいい人たち」の場合は離婚率が低い(17.1)。逆に妻が「運輸・通信従事者」の場合は高く(60.1)となっているが、主に自動車や船舶の運転手のことであり、そもそも母数自体が少ないので除外しよう。
また、夫が「無職」だと離婚率は高くなる(35.5)が、妻が「無職」の場合は高くない。この場合の「無職」とは無収入という意味で、専業主婦なども含まると思われる。逆に妻が管理職の場合は、32.4と跳ね上がる。
離婚率が低い職業としては、事務職、生産職に加えて農林業などとなっている。事務職や生産職は、比較的心穏やかな仕事ということか。農林業は、一般的に夫婦で協力しながら仕事をすることに加え、村社会や離婚後の職業難といった事情が影響しているのだろうか。
一方、男女とも離婚率が高いのが、サービス職だ。主に、介護、ホテル、飲食、理美容などの業界ということになる。サービス業の離婚率が高いのは、接客によるストレスに加え、比較的低所得の人たちが多いことに起因しているのではないだろうか。
まとめると、
1.ストレスの多い仕事
2.夫の低収入(生活が苦しいから)
3.妻の高収入(別れても自立できるから、我慢しない)
が離婚の注意信号ということになろうか。そういえば、なぜか最近、私の妻が介護関連の資格勉強をはじめたようだ。
何とか勉強を止めてくれるよう、説得する方法を考え出さねば。
山口 俊一
株式会社新経営サービス
人事戦略研究所 所長
人事コンサルタント 山口俊一の “視点”