「汚染水」って何?

2013年10月10日 09:55

福島第一原発から出る汚染水が大きな問題になっています。安倍首相は「汚染水はコントロールされている」と宣言し、政府は470億円かけて汚染水を外洋に出さないための巨大な壁をつくる計画です。これは汚水とは違うんでしょうか? 

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工場からの汚水は、日本中でたくさん出ています。たとえば経口毒性(飲んだときの毒性)がプルトニウムより強い水銀は、東京湾では最大800ppb(0.00008%)出ていて、上の図のように水域のほとんどが250ppb以上です。これは水銀の水質基準(0.0005%)を下回っていますが、全国では1年に合計22トン(3万8000人分の致死量)以上が排出されています。

いま福島県の沖合30kmで観測されている放射性物質の濃度は、海洋生物環境研究所の日下部正志さんの調べでは、最近は図のように0.1ベクレル/リットルと飲料水の水質基準(10ベクレル)をはるかに下回っています。だからそのまま飲んでもかまわないし、もちろん福島県沖合でとれた魚を食べても問題ありません。


福島県沖合の放射性セシウム濃度

水銀のように危険な物質を含む「汚水」でも、薄めて流せば人体に影響はないので、他の物質はそうしています。現状でも人体に害はないのに、なぜ原発の「汚染水」だけゼロにしなければいけないのでしょうか?

これは小学生にはわからない大人の事情です。東京でオリンピックをやるために、福島の放射能が東京にも影響するのではないかという世界の人々の心配を打ち消す必要があって、安倍首相は「汚染水は完全にブロックされている」といったのです。でも上にみたように、今でも人体への影響はないのだから、ブロックする必要なんかありません。

日本の大気も水も汚染されています。かつては水俣病(水銀が原因)など悲惨な公害病も起きましたが、今は水銀の濃度も上のように低くなり、命にかかわるような汚染はありません。もちろんゼロにできれば、それに越したことはありませんが、そのためには汚染物質を少しでも含む食品はすべて禁止しなければなりません。水銀をもっとも多く含む食品は何だと思いますか?

マグロです。クロマグロに含まれる水銀の濃度は、最大10ppm(0.001%)と水質基準を上回っています。マグロの刺身のほうが、福島の水よりはるかに危険なのです。「汚染水をゼロにしろ」というみなさんは、マグロを食べるのをやめるんでしょうか?

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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