米国の財団と富裕層の力

2013年11月26日 12:00

富の再配分システムといえば、日本では、累進税率と相続税に代表される租税体系であるが、米国では、富裕層の寄付による財団の活動である。米国では、教育、福祉、文化、様々な分野で活発に活動する財団の資金は、財団資産の運用によって賄われている。なかでも、大学財団の資産運用は、日本でも有名になってきた。


それから、米国には、ファミリーオフィスというのもある。その名のとおり、富裕な一族の資産を管理運用する会社である。これらのファミリーオフィスも様々な慈善活動をしている。

1兆円を超える財団がたくさんあり、100億円以上の規模のファミリーオフィスが数え切れないほどある、これが米国の格差社会を象徴する事実なのである。そして、米国の資産運用業界では、財団やファミリーオフィスが非常に大きな地位を占めている。特に、ヘッジファンドとプライベートエクイティ、その他オルタナティブと称される投資のあり方は、財団とファミリーオフィスなしには、成り立ち得なかったと思われる。

実は、リスクの大きな投資を可能にするためには、富を平均的に分布させるよりは、富裕層に集中させるほうが理論的には望ましい。それが、1980年代のレーガン大統領やサッチャー首相の改革において、相続税の減税と累進税率の大幅な緩和が目玉として実行された理由である。まさに、格差をつけることで、一部に富を集積させてリスク耐性の強い大きな資本を形成し、それがテクノロジー投資などの新規分野に大胆に投資されていくことで、経済を成長させようということであった。

原理は簡単である。1兆円が1億人に各1万円分布していても、投資資金にはなり得ない。それを、千人に各10億円という形に集積させれば、大きなリスクにも耐え得る投資資金になるのである。

よく知られているように、米国におけるベンチャーキャピタルの規模と機能は、日本のものを圧倒的に凌駕している。そのベンチャーキャピタルの有力な投資家は、財団とファミリーオフィスである。また、起業にあたっては、エンジェルと呼ばれる富裕層の資金支援が重要な役割を演じている。まさに、80年代改革の効果であって、その後の米国の経済成長に極めて大きな貢献をしたのは、間違いないのである。

さて、日本では、到底、米国型の社会構造へは転換できないであろう。どうしても、租税の還流にならざるを得ない。故に、米国では、財団やファミリーオフィスがやることを、日本では、官民ファンドがやることになるのである。さてさて、この日本的ありよう、仕方ないこととあきらめるべきか。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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