リクナビの『地獄のミサワ』CMはなぜ気持ち悪いのか

2013年11月15日 18:00


実に気持ち悪いCMを見てしまった。『地獄のミサワ』キャラクターが登場するリクナビ2015のCMである。キャラクターが気持ち悪いだけでない。リクルートの手のひらで踊らされている感、偽善的な臭いが気持ち悪いのだ。そして、就活する学生をバカにしていないか。


ここで訴求されているのは、リクナビの新機能、『OpenES』と『就活マネージャー』だ。前者はいわゆる、共通化したエントリーシート、後者は総合的なスケジュール管理ツールである。リリース文はこちらである(http://www.recruitcareer.co.jp/news/old/2013/131115_01/)。

前者の『OpenES』については、以前、意見を書いた。

NEWSポストセブン|就活エントリーシートを共通化しても学生は救われないと識者 http://www.news-postseven.com/archives/20131023_223374.html

要するに、機能強化、学生の負荷軽減は立派なことなのであるが、学生が何社も受けて、落ちて、疲れるという構造はちっとも解決されない(もちろん、一部はリクナビの責任ではない)。

手間が軽減する、応募数が増えるというのだが、やや穿った見方をするならば、大手にはますます応募が集まり、さばくのが大変になり、中堅・中小企業にはいい加減な応募が増えるということにならないか。

応募数の肥大化による、学歴差別対応など、不透明なことがますます増えることも懸念される。要するに、便利だけど、大変なリクナビ型就活の構造はまったく変わらないわけだ。

どうでもいいが、このリリース文にある、

「エントリーシート作成は平均1530分!」

というのは実に巧妙な煽りだ。頭のいい学生は、こんな誇大表示に騙されてはいけない。

先ほどのNEWSポストセブンの記事で触れたが、リクナビを運営するリクルートキャリアの調べによると学生のエントリーシート平均提出数は22社。データを取った対象が違うので、やや乱暴な試算ではあるが、割り算すると、1社あたり約69.5分だ。1時間ちょいじゃないか。いや、十分な負担ではある。ただ、1530分!と書かれると、随分印象が違う。業界をリードする就職情報会社がこのように学生を煽り、脅迫している事実を我々は直視しなければならない。

『就活マネージャー』については、学生の囲い込み強化施策だと認識した。これにより、完全に学生をリクナビのシステムに取り込むという発想なのだろう。リクナビが普及した背景には、企業の採用活動、学生の就職活動に、システムとして入り込んだことがあげられる。学生側の活動にさらに入り込もうというわけなのだろう。これは推測ではあるが、これでより学生の行動パターンを把握できるようになるのではないだろうか。学生の動きの分析、企業への提案に役立ちそうだ。もちろん、リクルートキャリアの企画マン、営業マンにとって。

就活の負荷が軽減されるのは良いことだが、リクナビ型就活の問題はちっとも解決されないのではない。結局、リクルートさんの手のひらの上で踊らされるだけではないかと思った次第である。
 
もう一つ気になったのは、あくまで私の感想ではあるが、率直にこのCM、不愉快だ。面白くない。自分たちが加担してきた世界に対して、まったく反省していないというか。学生をバカにしていないか。そもそも、『地獄のミサワ』は人気があるらしいのだが、多くの学生に受けるのだろうか。

一方、ひたすら機能訴求型というのも面白いポイントである。これまで、リクナビがTV CMを流すときは、「就活を頑張ろう」的な応援メッセージのものがあった。そこに、やや偽善的な臭いも感じてしまったわけだが。まあ、今後、その手のメッセージのCMが控えているのかもしれないが。

というわけで、いろんな意味で気持ち悪いなと思った次第だ。学生には、こういう大人の事情はわからない。ただ、一見すると便利そうなものにより、自分たちが踊らされているということに気づいてほしい。

リクルートグループのコーポレートメッセージ「まだ、ここにない、出会い。」は聞こえがいいのだが、穿った見方をすると、クライアントと自分たちのために、生活者よ死ぬほどアクションしろという風にも聞こえてしまうのだ。

リクナビは、学生を幸せにしたのか?就活解禁日を前に、今こそ問おうではないか。



なお、リクナビの功罪については最新作『「就社志向」の研究』でまるごと1章かけて検討しているので、よろしければご覧頂きたい。

もうすぐ就活解禁日だ。まあ、一部ではとっくに始まっているのだけど。このように、誰もが面白がって、賛同しそうなことに、心を鬼にして水をさし、第二、第三の視点を提示するとも、大人の大事な役割だと思っている。これも、私なりの若者を応援する取り組みである。

就活の栞

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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