ポップカルチャー政策とは?:自民党本部にて

2014年02月10日 12:48

自民党知財調査会コンテンツ小委員会に出席し、ポップカルチャーとクールジャパン政策について、保岡興治会長、小坂憲次小委員長、福田峰之事務局長ほか多数のかたがたと議論しました。まずはぼくのプレゼンからメモしておきます。


コンテンツとクールジャパンの政策動向を共有したい。クールジャパンという言葉が生まれて10年。失われた20年の間に、日本に対する海外の認識は産業国から文化国へと変化した。


世界での日本語学習者数は1998年の210万人から2009年の365万人へと急増し、その最大の理由がアニメ・マンガにあるという。私のゼミにも10名以上、各国から留学生が来るが、志望動機はソニーでもトヨタでもなく、アニメとファッション。

注意すべきは、クールジャパンは日本が評価してプロデュースしたものではないということ。2002年、米ダグラス・マッグレイ氏が日本が文化力を発揮していると指摘し、ハーバードのジョセフ・ナイ教授が、ソフトパワー論の一環で日本はポップ力を活かすべきと指摘した。日本がそれを消化しようとするまで10年を要した。

クールジャパンと呼ばれる日本のコンテンツ、ポップカルチャーの特徴を、6つ挙げてみる。

1 輸入:マンガもアニメもゲームも、元々の技法や基礎技術は海外から輸入して、その上で文化の花を咲かせたもの。
2 多様:マンガもアニメもゲームも、上下左右にあらゆるジャンルが開拓されている。和洋中これだけ多彩な食べ物がある国はない。
3 自由:宗教や社会の規範が緩い。暴力表現・エロ表現の規律が緩い。だから日本アニメが海外で叩かれるが、それが人気の元でもある。日本ではどんな格好も許される、と西洋人も中国人もうらやましがる。
4 大人と子どもの文化の境界があいまい。大人がマンガをむさぼり読むのが力の源。大衆・庶民が支えてきた。
5 参加:誰もが表現者として参加する。誰でもピカソ力。道を聞かれて地図を描ける人は世界にそんなにいない。だれもが縦笛をふける国はない。数十万人ものアマチュアマンガ家とファンがトップクリエイターの下にコミュニティをなすコミケだけで年間売上が映画産業の1/3に達する。
6 技術と表現のドッキング。ものづくり力と文化力、の双方を持ち合わせている。農業社会や工業社会は土地や資源を持てる国の社会。情報社会は技術と表現を持てる国の社会。典型が初音ミク。ボーカロイド技術とアニメ表現。さらにそれをニコニコ動画というSNSでみなが参加して育てた。技術・表現・ネットの組み合わせで世界に進出する、のが一つの戦略。任天堂のファミコンも、ソニーのウォークマンもそう。ハードウェアの技術と、ファミコンソフトやCBSソニーのコンテンツの組み合わせ。それを世界の流通を押さえて80年代に世界制覇した。いまGoogeもAppleもAmazonも同じモデルで、ただし流通をネットに置き換えて世界征服しているが、日本にできないものではない。

これを踏まえ、政策はどうすればいいか。政府での政策立案の場はいくつもあるが、長期戦略のとりまとめは知財本部が担当。短期戦略として、この政権はクールジャパン推進会議を設置、特に海外展開策を練っている。

知財本部では、従来、国内重視で産業を支援し、そのためにもコンテンツのプロを育成する人材育成策を重視してきたが、ここ数年で大きく戦略を転換している。

海外展開に軸を移して、産業界を助成する以上に、制度やインフラの整備に力を入れる。プロだけでなく、国民全体の教育に力を入れる。という方向だ。

1 海外展開。放送番組の海外配信に取り組んだり、海賊版や違法配信の取り締まりを強化したりする。
2 基盤整備。通信放送のネットワークを整備してコンテンツの流通を促す。そのための規制も緩和する。電子書籍のような新しい産業基盤を整える。
3 人材育成。教育の情報化を推進して、ポップな創造力と表現力を底上げする。

一方、短期戦略として、クールジャパン推進会議が置かれた。ただしクールジャパンは概念があいまいで、コンテンツのほかにもファッションや食、観光その他のジャンルも含まれる。そこで、コンテンツ分野の海外展開策を切り出して考えるため、ポップカルチャー分科会が設置され、私が議長として意見とりまとめた。
「飛び出せ、日本ポップカルチャー」とタイトルがつけられた提言は3つの柱からなる。

1 みんなで:政府主導でなく、クリエイター、プロデューサー、ファン、みんなで進める。
2 つながって:ネットの力をいかしてつなげる+コンテンツだけでなく、食、ファッションなどの総合力を発揮。コンテンツ「を」売る、という戦略から、コンテンツ「で」みんながうるおう。コンテンツを先兵にする。
3 そだてる:人材を育てていく。

中長期政策として、6月に知財政策ビジョンが策定された。知財本部設置から10年、今後10年を展望した政策を考えるものだ。さらにその要約を「基本方針」として初めて閣議決定してもらった。

そこには二つの背景があった。まず、ここ1-2年の急激なメディア環境の変化だ。スマホ、タブレットなどのマルチデバイス、クラウドネットワーク、そしてソーシャルサービスといったメディアの刷新が世界的に進んでいること。もう一つは、グローバル競争で他国に後れを取っていること。競争力を活かせていない、という認識だ。

この基本方針のうち、コンテンツについては2つの柱からなる。
まず「デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備」。具体的には、

・コンテンツ産業に資源を重点配分する。優先度を上げる。
・放送番組の二次利用を促進するため権利処理を円滑化する。
・ネットを使ってユーザが作るコンテンツを増やす。
・デジタル教科書・教材を整備するための措置、教育情報化を推進する。

もう一つは「ソフトパワー強化」。

・海外の放送枠を確保したり、リスクマネー供給を促す機関を設置したりする。
・国際的に通用するクリエーターやプロデューサーを育てる。
・ソフトパワーと連携してビジット・ジャパン事業を推進する。
・海外での模倣品・海賊版対策を強化する。

今回とりまとめを担当し、大きな方向性が3点整理できた。

1 プライオリティの向上:資源配分の重点化、優先度の向上を訴えた。農業・工業社会から情報社会に移行する中で、コンテンツ政策や知財戦略が重要だと確認。
2 政策転換:プロが作るコンテンツだけでなく、みんなの力を活かす。コンテンツビジネスだけでなく、国民全体の問題として捉える。みんなが映像や音楽を産み出す創造力を後押しする。政策の視点をコンテンツ産業12兆円から、GDP470兆円に拡げよう、という見方。
3 推進体制の整備:政府の一体的な取組、総合的体制の整備、もビジョンに明記。

この3点の方向で進めていただきたい。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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