オープンデータとブラックジャックによろしく。 --- 中村 伊知哉

2014年03月10日 07:19

オープンデータシンポジウム。今年もまた東京大学伊藤謝恩ホールで開催しました。ぼくが理事を務めるオープンデータ流通推進コンソーシアムが主催です。

冒頭、藤川総務大臣政務官が、6月の世界最先端IT国家創造宣言で、2015年度末には世界最高水準のオープンデータ実現をうたったと報告されました。昨年度末の会合で、世界ランク19位の日本を3年で世界一しようと提案がなされ、そりゃ無茶だろう、でも民間のコンソーシアム旗を立てるぶんにはいいよね、と議論していたもの。なんと国家目標になったんですね。


次いでコンソーシアム会長の小宮山宏親分は、今後のカギは複数分野のデータを横断的につなぐ技術と高速大容量データを収集・処理・解析する技術だと指摘しました。しばらくテクノロジードリブンですかね。

同時に必要なのは、データをオープンにする努力。これに関し、井上由里子データガバナンス委員長は、国のもつ公共データをオープンにするためにクリエイティブコモンズを各省のホームページなどで活用する取組を報告しました。力強く進めてください。

ぼくは利活用普及委員会の報告。昨年は、波は高いが船をこぎ出そうという団結式でした。今年は、高波に揺られながらも船が向こう岸に進んでいるという確認です。コンソーシアムとしては、海外への情報発信を強化したり、アプリコンテストなどの参加型イベントを開催して草の根的に拡げたり、自治体を巻き込んでいったりしています。コンテストは経産省と総務省の共催で進めているんですが、これは一昔前は考えられなかった。政府のやる気が見えます。
 
さて、今回、「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰さんにお越しいただきました。「ブラックジャックによろしく」の二次利用をフリーにした話を聞いたんです。パロディ、アニメ、小説、映画全て事前承諾不要でコピーも配信もOKにしたというもの。情報をオープンでフリーにすることで、一体何が起きるのか。その事例を共有してもらいました。

出版市場は8年連続で縮小。マンガは95年の65%に縮小しているといいます。なのに電子書籍を巡ってマンガ家と出版社の対立もあり、ならばマンガ家の利益を増やすためまず拡散、と考えてやった、と佐藤さん。

その結果、1年で712件の利用があったといいます。アプリが160万ダウンロードされたというマンガの拡散だけでなく、演劇、AV、酒も造られるなどの拡張。文化として広りをみせました。

そして、「新ブラックジャックによろしく」の方はフリーにせず、そちらに誘導するというビジネスも考えたそうです。なるほど。やみくもにオープンにしたわけではないと。

すると二次利用フリーで他の電子書籍作品の売り上げが増加したそうです。それも、1年で1.5億円売上増。佐藤さんの収入は7000万円アップ(あけすけ)! フリーにしたらもうかった、というおはなしでした。

佐藤さんは出版社に著作権を与えることに疑問を呈していて、ぼくは知財本部でその議論をとりまとめる役割なので、聞く立場的にはビミョーなんですが、でも佐藤さんのやってることはパンクでわかりやすい。こうでなくちゃいけません、われわれオープンデータも。

オープンデータに求められるのは、技術も、オープン化努力もありますが、それ以上に、こういうわかりやすい成果を増やしていくこと。引き続き、がんばります。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年3月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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