中国バブル崩壊は秒読み段階か --- 岡本 裕明

アゴラ

中国経済の行方がいよいよ佳境に入ってきた気がします。銅価格の下落を受けて「崩壊の前兆」などと書かれたニュースは瞬く間に世界を駆け巡り、今や、ウクライナ問題よりも大きな関心をもって見られている気すらします。

中国はまさに衆目の中でいかに経済をコントロールするか腐心しているのだと思いますが、あらゆる矛盾の中でつじつま合わせの世界が引き起こすであろう経済の「ボロ」を防ぐ特効薬はないでしょう。


そんな中、中国の中央銀行である中国人民銀行の周小川総裁が将来的に預金金利を自由化する考えを表明しました。理財商品と称する高利の投資商品が流行ったのは中国の預金利息が規制されていることも背景の一因といわれています。例えば定期預金なら今なら年3.3%までに制限されています。

中国人の気質はとにかく、より高いリターンを求める癖が強く、「偉い人」と知り合いになり「個室」で「一般にはお売りしていないのですが」という甘い言葉を聞けば絶対に自分だけ得するという気持ちになりやすいきらいが強いといえます。私も長年、中国の方といろいろな形で接してきましたが、この傾向は他の人種より圧倒的な特質であるといえましょう。それは貪欲ともいえるのですが、信じられるものは国家ではなく、財産という価値観の違いからも来ているかもしれません。

話を元に戻しますが、周総裁が預金金利の自由化を「できれば1~2年のうちに」と個人の考えを表明するまでに追い込まれているところにコトの緊張感がにじみ出ていると言えそうです。では、仮に金利自由化を行った場合、本当に理財商品はなくなるのでしょうか?

私はそんなことはなく、むしろ、銀行システムも揺るがす可能性がある様な気がしています。

中国は表向きと裏向きで違う顔を見せるわけで金利自由化などをすれば競合意識が働き、裏で「とんでもディール」が横行しかねない可能性すらあるのではないでしょうか? 仮に銀行システムという顔を立てるなら顧客に「これは当行の関連会社が販売している○○という投資商品なのですが、こちらならお客様のご要望の利息にお応えできるかと」と結局理財商品との比較になる感じでしょう。結果としては預金利息を自由化しようとしまいと現状のつぎはぎだらけの経済にパッチがもう一枚加わるだけという気がします。

今回の騒動の火種は理財商品の一部のディフォルトと銅価格の急落でした。この二つの関連しあったスキームはある意味、貪欲の塊ともいえます。つまり、銅をUSドル建ての信用状をもって輸入、銅そのものはすぐに売却し、その資金で理財商品を買い、信用状と理財商品の金利の差抜きを行うというものだと理解しています。わかりにくいかもしれませんが、このスキームには二つの大きなリスクがあります。一つは購入した銅を売却する市場価格。次に理財商品の安全性。この両者が安定している限りにおいてこの挑発的スキームは成り立つのですが、往々にしてそれこそ「個室であなただけに」とささやいているうちはよいのですが、世界中の新聞にでかでかと載ってしまってはスキームもへったくれもあったものではありません。

挙句の果てに不健全な理財商品はディフォルトを、という声が正々堂々と出始めている今、逆に恐れるのは銅の国際価格の暴落かもしれません。但し、その暴落も一時的なもので止まるはずです。なぜならこのスキームが理財商品で使われたと思われるのはまだ半年程度ですから銅の理財関係の余剰積み上げはせいぜい1万5000トン程度と思われ、国際銅市場の需給関係を長期的に完全に狂わせるほどではないはずです。私はカナダで銅関連にも多少投資があるのですがそちらの市況は特に酷いということにはなっていません。

いずれにせよ、政府と中央銀行、投資家に事業家の四つ巴の化かし合いというか泥仕合は勝者なしで終わると思います。中国型経済に資本主義のフレーバーをはめ込むというのはシステムとして不整合が起きるということではないでしょうか?

では習近平国家主席。私は彼は賢いと思います。なぜならバブルが崩壊しても直接に影響を受けない一般の平民の人心をとらえる戦略に出ているのですから。中国の見方はここにキーが内包されていると思います。バブル崩壊するのは上辺だけでその国家再建に於いて第二の毛沢東的ポジションを確保するとすれば理にかないます。私の中国の読み方はこうではないかと思っております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。