とある、月刊のマネー誌の編集長さんと、新しい企画についてのミーティングをしました。アベノミクスによる株価の上昇や、NISA導入に伴う金融機関からの広告収入の増大によって、マネー誌は各誌とも収益性がかなり向上しているようです。
しかし、一方で毎月送られてくるマネー誌各誌を読んでいると、日本人のお金との付き合い方を啓蒙する雑誌として「これで良いのか?」と思うことも多いのです。
例えば、最近のマネー誌には、株主優待の特集が頻繁に登場します。年度末の権利確定が近く、この時期に株式を購入して配当と株主優待を狙う投資家が多いのはわかります。しかし、株主優待を目当てにして株式を購入するというのは、本末転倒です。
キャピタルゲイン、インカムゲイン、があって初めて株主優待も考える。トータルの投資として収益性を予想しながら投資するのが、個別銘柄投資で本来やるべきことではないでしょうか。
また、株主優待に限らず、マネー誌の内容の半分以上は相変わらず、日本株です。「投資=日本株投資」という読者の固定観念があるのはわかりますが、それをグローバルに変えていくくらいの心意気が欲しいところです。
ロジカルに考えれば、マネー誌のベージ割は、アセットアロケーションと同じにするのが基本です。私の考える資産配分では、日本株は資産全体の10%。だとすればマネー誌の日本株の取り扱いも全体の10%で良いということになります。
逆に、外貨資産を40%保有するなら、4割は外貨投資の誌面にする。不動産を10%組み入れるなら、不動産の記事を200ページの雑誌の20ページ分確保すると言ったことが必要になってくるのです。
エンターテイメント性が無いと雑誌が売れないという現実は理解できます。しかし、エンターテインメントだけで終わってしまっては、資産運用の情報提供媒体としての価値は無くなります。単なる、「趣味の雑誌」に変わってしまいます。
2005年に「内藤忍の資産設計塾」の初版を出版した時から、日本の個人投資家に最も足りないものは、外貨資産だと言い続けています。日本の個人金融資産1600兆円のうち、外貨投資に回っている資産は100兆円にも満たない数字です。40%を外貨で保有するなら、600兆円の外貨への資産シフトが必要なのです。
円資産、しかも預貯金だけを保有して、円安リスクとインフレリスクに資産をさらしている人たちが、これから何をすべきか?株主優待を調べて、日本株投資をすることではないはずです。
では、どうしたら良いか?その具体的な処方箋を提供し、日本人の資産運用・資産防衛に関する情報提供を行う。これが、マネー雑誌のやるべきことだと思うのです。
幸い、ミーティングをさせていただいた同じ年に生まれた編集長さんには、既成概念を打ち破る斬新な企画、日本人の資産運用の本質を変えるコンテンツに大いに興味を示して頂きました。4月に発売の誌面から、新たな取り組みをご一緒させていただく予定です。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。