本日のマーケット、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表を21日に控え投票メンバーの発言を失望し大幅安となりました。まずタカ派寄りの最右翼、フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁が「見通し通り経済改善が続けば、現状の緩和縮小ペースでは緩慢な可能性がある」と発言。ハト派と目されていたNY連銀のダドリー総裁さえ、市場動向次第では利上げペースの加速に言及したんですから、反応せざるをえません。
奇しくもCNBCで、こんなニュースも出ていたらなおさらです。
CNBCの朝番組「Squawk Box」に出演したリンゼー・グループのアナリスト、ピーター・ブックバール氏いわく量的緩和第3弾(QE3)の終了で、株式市場は「15~20%下落する」というんです。
ナスダックとラッセル2000の足元の下落も、QE終了前の下落プレリュードと予想。ダウ平均とS&P500も時間の問題で、まもなく下降線へ転じると見込んでいます。
QE1とQE2が終幕を迎えた際、まさに相場が15~20%下落したからというのがその理由。
では実際にどうだったか検証してみましょう。
QE1(2008年11月~2010年6月)終了後のS&P500は、以下の通り。
4月26日のザラ場高値1219.80pから、6月30日には1028.33pまで、約16%下落しました。それからまもなく、QE2観測が浮上。過剰流動性相場の宴再開への期待から、上り調子へ転じたわけです。
QE2(2010年11月~2011年6月)終了後のS&P500は、以下の通り。
5月2日のザラ場高値1370.58pから6月16日のザラ場安値1258.07pまで、約10%下落しました。さらに2011年はもつれにもつれた債務上限引き上げ交渉、格付け会社S&Pによる米国債格下げもあって、10月4日には1074.77pまで下げ幅を拡大。5月のザラ場の高値から見ると、22%も落ち込んでいたんです。
ブックバール氏は、「当時も今の状況そのままにカーブはフラットニングしていた」といいます。
QE3終了宣言まであと5ヵ月はあるとはいえ、FOMC開催中に「中期的な金融政策」を協議する会合が開催され出口戦略の手直し中。あなたなぁ~らどぉする~♪なんて歌っても仕方ないので、QE3後あるいは利上げ後の世界に備えておきましょう。
ただしダドリーNY連銀総裁の講演を振り返ると、やっぱり慎重な利上げとなる公算が大きいんですけどね。同総裁は1)FF金利の長期的な中立水準、2)償還分の再投資終了を経て利上げ開始のシナリオ変更、3)リバースレポ——について論じました。いわば出口政策を協議したであろう4月FOMC議事録の公表を前に、予告編を披露したかたちとなっています。
講演では
1)FF金利の長期的な中立水準→低い成長率、労働市場の遅々とした回復、銀行に対する資本規制強化などを踏まえ、中立水準は以前より低いと判断。テイラールールでいう2%は高過ぎるとの見方を示唆。
2)償還分の再投資→再投資を終了させてから利上げ開始という、2011年4月議事録で示した出口路線を修正。バランスシートと金利と政策を分離させる方針を示唆。
3)リバースレポ→流動性吸収の一環として利用。
ダドリー総裁の講演内容がFOMCの多数派だとすればFOMC議事録がタカ派に傾くとは想定しづらいですが、どうなりますでしょうか。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年5月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。