「天国は近づいた」 --- 長谷川 良

2014年05月23日 21:51

イエスは弟子たちやユダヤ人たちを前に「天国は近づいた」(新約聖書「マタイによる福音書」4章17節)と宣言した。あれから2000年の月日が経過した。

世界到る所で紛争と戦争、憎しみと対立が繰り返されている。シリア内戦では既に16万人以上が犠牲となった。イスラエルとパレスチナの和平交渉は停止状況だ。ウクライナ危機では欧米とロシア間で険悪な関係が続き、戦争に発展する恐れすら懸念され出した。


紛争地域だけではない。欧州では多くの若者たちが失業状況だ。富む者と貧しい人々の格差は拡大。それだけではない。合成麻薬などの麻薬中毒がじわじわと浸透し、欧米文化は内から崩れ落ちようとしている。

どこに天国はあるのか。残念ながら、どこにも天国を見いだせない。それではイエスは偽預言者だったのか。信仰の薄い弟子たちを鼓舞するために「もう少し我慢すれば、天国は到来する」とハッタリを利かしただけなのか。

世界最大の宗派、キリスト教信者たちはイエスの「天国は近づいた」という言葉を信じてきた人々だ。彼らはイエスの言葉に騙された哀れな犠牲者に過ぎないのだろうか。

5月29日は「イエス(主の)昇天の日」を迎える。復活イエスが40日間歩んだ後、天国に昇天する日だ。その後、ペンテコステ(聖霊降臨)が起きた。弟子たちは今にもイエスは再臨し、天国が到来すると堅く信じ、殉教の道を厭わず進んでいった。

やはり、「天国は近づいた」のだ。極端にいえば、外的な環境は限りなく天国に近いから、あとは人間が良くなれば天国は到来する時を迎えている。

科学分野では天国は既に到来している。全世界の人々が一瞬のうちに互いに通信でき、全ての出来事を共有できる。再生医学が登場してきた。米物理学者ミチオ・カク教授の「未来の物理学」を読めば、その感を一層強くする。ロボット技術からナノテクノロジー、宇宙技術からコンピューター技術まで、科学はわれわれが考えている以上に急速に発展してきた。

欧州司法裁判所は先日、グーグル社は請求があれば個人情報を同社のサーバーから削除しなければならない、という判断を下した。大量の個人情報が行き来する現代社会では、その情報が悪用される危険性は現実的だ。だから、情報管理は大きな問題だ。その一方、ビッグ・データ(Big Data)を分析することで都市計画、輸送計画などに役立つ。それを研究する「社会物理学」が現在、脚光を浴びてきた。

同じ情報が悪い目的にも社会発展のためにも利用できる。全て「人」の対応次第でその評価が変わるわけだ。

それでは、どうしたらわれわれ一人一人は天国の住人となれるだろうか。わたしたちは外的な天国作りに追われる余り、天国人になる為の内容を疎かにしてきた。

わたしたちが成長しなければならないことは明らかだが、どのように成長すべきかは各自が答えを見出す以外にないだろう。

ちなみに、イエスは「天国は近づいた」という言葉を発する前に、「悔い改めよ」と語っている。イエスはわたしたちに「過去」の清算、パラダイムシフトを求めていたのだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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