靖国神社と集団的自衛権の矛盾 --- 山城 良雄

2014年05月30日 07:37

気は確かかと言いたい。何がって? 集団的自衛権の論議や。はっきり言うておく、今の交際社会は集団的自衛権が機能するほど上品なところやない。米国はそれほどウブではないとな。

集団的自衛権を解釈改憲で認めるべきやという議論(以下「集団的自衛論」とする)の人に聞きたい。集団的自衛論で日本が得をするケースを想定してみてほしい。


まず、仮想敵国はどこや。常識として、韓国・北朝鮮・中国・ロシアのいずれかやろ。ギリシャやウガンダと日本が事を構える可能性は今のところ無い。逆に集団自衛論のせいで、国民のほとんどが存在自体を知らない国と、なぜか突然戦争になる可能性が新たに発生するが、その話は、とりあえず置いておこう。

話を仮想敵国に戻して、まず韓国。軍事的な争点は実質竹島しかない。それ以外の場所(たとえば対馬)に武力侵攻してきた場合、日本国内の世論は沸騰し完全な断交状態になる。はたして、韓国経済が何日もつか見ものや。少なくとも、対馬領有ぐらいでは引き合わん損害になるやろ。

一方、現実に竹島は不法占領されているのに、米国は何もしてくれん。それどころか、仮に日本が自衛権の発動で竹島を奪還したとすると、「力による現状の変更は黙認できない」と言い出すに決まってる。結局米軍は役に立たん。

北朝鮮に関してはもっとはっきりしている。今のところ不思議なことに、北と日本との間に領土問題は抱えておらん。ただし、拉致問題がある。これまた、米国は何もしてくれん。というか、実際何もできん。

軍というものは、「平時に理由もなく文民を拉致する国家」を想定して編成されているわけではないから、もともと、やれることがあまりない。もちろん、プライベートライアンみたいに特殊救出部隊を出すほど米軍は親切ではない。

実はワシ妙なことを考えてた事がある。北と集団的自衛協定を組むと面白いことになるかも知れん。北の核技術と日本のあり余るプルトニウム、H2Aやイプシロンなどのロケット技術。命知らずの工作員とハイテク技術。驚くほど相性がいい。問題は組む理由が全くないということや(それやったら初めから言うなって)。

さて、中国とロシア、こういう大物を日本が相手にした場合。米軍が動くかどうかは、米国だけの都合で決まる。日本の側に集団的自衛権があるかないかは、たいした問題やない。当たり前やないか、下手に動けば第三次世界大戦になるリスクを、たかが同盟国のためにオバマが冒すわけがないがな。

尖閣や拉致と比べて遙かに米国にとって、ずっと「捨て置けない」問題であるはずの、クリミア半島やシリアでも、オバマ政権はヘタレな対応をしておる。集団的自衛論者は、「日米が防衛分野でより協力すれば、米軍も日本を重視するようになる」と言うておるが、あまり当てに出来る話ではなかろう。

たとえば、PKO派遣先で自衛隊の部隊が米部隊を守るために獅子奮迅の活躍の末、全員壮絶な最期をとげたとしても、翌年の「択捉島奪回奇襲作戦」に第七艦隊が全面参加してくれるはずがない。大規模な軍事行動は、結局自国の都合で全てが決まる。

集団的自衛権が役に立つとすれば自衛隊の攻撃力が強大になり、米軍の汚れ仕事の肩代わりができるようになったときだけや。たとえば、シリアなんかでも、オバマが議会とすったもんだしている内に、さっさと出張っていって空爆して帰ってくる。

米国が、「言うことを聞かんと、うちの若いもん(日本軍)が、何をしでかすかわかりまへんで」と外交交渉で言えるぐらいでないと、貸しにはならん。それなら、近隣諸国がビビる強大な軍備で、個別自衛に向かったほうが話がよほど早い。

解釈改憲でできる限りの国際貢献をすれば、米国世論が味方をしてくれる。という乙女の祈りのようが議論。全くの空論でもないが、安倍政権のやっていることとは矛盾しとる。靖国問題や。

一神教国にはよほどうまく説明しておかんと、思いっきり誤解されるでという話は以前にもしたが、案の定、日本人は自分たちと同じ価値観の持ち主なのか疑問、というレベルにまで誤解が広がっている。

特に一般民衆の場合、「靖国の英霊に祈るのなら、その特攻で船ごと沈められたうちのグランパは何なの」という素朴な疑問に答えておかんと、潜在的に日本人は敵やと思われる。

これが、一神教的風に「戦没者の冥福を八百万の神に祈る」と言えばイメージが全然違う。参拝の記事をよく読んでみると、安倍総理の談話では「英霊に手お合わせ、恒久平和を祈る」と「誰に」祈るのかをぼやかしているが、こんなものどうやって英訳するんやろ。

唯一神を信じていない人間が「祈る」と言った時、何を意味するのか説明しておかんと、日本異質論はどんどん広がっていく。西欧での日本のイメージへの影響を言えば、自衛官3人のPKOでの殉職と首相の参拝1回が釣り合っている程度やと思う。

最後に「集団的自衛権の行使で日本人が戦争に巻き込まれるリスクが高まることはありません」と言っているヤツに聞きたい、あんたにとって自衛官は日本人やないんやな。話を靖国に戻すと、靖国が西欧に文化的に受け入れられるために最初にするべきなのは、「当神社の最大の望は今後英霊を増やさないことです」と言うべきやと思う。

本気で安全保障を考えるなら、解釈改憲よりも役にたつことは、いくらでもあるように思うがのう。

今日はこれぐらいにしといたるわ。

帰ってきたサイエンティスト
山城 良雄

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