政府は「地方創成本部」をつくって、安倍首相が本部長になるそうです。これがアベノミクスの「第4の矢」だともいわれ、内閣官房に準備チームが発足しました。NHKは「極点社会」とかいって、都市が人口の集中する「極点」になって田舎から人がいなくなるというキャンペーンを張っています。
日本創成会議という民間シンクタンクでは、「都市への人口集中がこのまま続くと、人口の再生産力を示す若年女性が2040 年までに50%以上減少する市町村が896(全体の半分)にのぼる」という推計を発表しました。このうち523市町村は人口が1万人を切り、自治体として維持できなくなるそうです。
それで何が困るんでしょうか?
人のいなくなった市町村は廃止して、住んでいた人は都市に引っ越せばいいのです。日本には引っ越す自由があるので、地方の人口が減ることには何の問題もありません。お店や役所の人は困るかもしれないが、よその市町村に行けばいいのです。次の図のように1960年代には毎年人口の約5%が地方から都市に移動しました。そのときが高度成長期だったのです。
これを「国土の均衡ある発展」とかいって止めようとして、地方に公共事業をばらまいたのが田中角栄以後の自民党政権でした。それは税金を使って彼らの地元の土建業者にお金をばらまく意味はあったでしょうが、成長は止まりました。バブルといわれた1980年代にも都市への人口移動が増えましたが、バブル崩壊で地方に戻りました。その結果が「失われた20年」の長期不況です。
この図からもわかるように、都市の人口が増えると成長し、「人口移動均衡期」には不況になるのです。都市が成長するサービス業の中心だからです。これから日本の人口が減るとき必要なのは、地方からの人口移動を増やして都市に集中することです。アジアの中ではまだ東京や大阪は競争力があるので、人口流入を維持しないと、都市も高齢化が急速に進みます。
21世紀は、都市間競争の時代だといわれます。上海、ムンバイ、リオデジャネイロなど1000万人以上の人口を集めるメガシティが、グローバル資本主義の中心になるのです。財源も限られてくるので、公共投資も大都市に集中すべきです。
地方はリゾートとして、自然環境を守ればいいのです。国土の隅々まで人が住むようになったのは田畑の開墾の進んだ江戸時代以降で、それまでは大雪の積もる山の中まで人は住んでいなかった。
困るのは、地方に予算をばらまいて誰も通らない道路ができ、成長が止まり、税金の負担が重くなることです。しかも世界と競争する大都市が税金を負担して、人のいない過疎地に税金がばらまかれたら、日本はますます衰退し、よい子のみなさんはますます貧しくなるでしょう。