日本がオランダの農業に学ぶべきこと

2014年07月12日 16:40

最近、オランダの農業に対する注目度が高まっている。安倍政権の成長戦略のなかに農業の成長産業化が謳われ、その実現のために、国土面積が狭いにも関わらず農産物輸出額が世界第2位であるオランダに倣おう、という動きが出ているためだ。

先日、オランダの農場を見る機会があったので、そこで感じたことを書きたいと思う。

最初に断っておくが、輸出云々は結果であって目的にすべきことではない。農業の生産性が高まり価格競争力がつくことで、結果として輸出が増えることになるのだ。最初から輸出をすることを目指すのではなく、農業の生産性を高めて競争力を持つことを日本は目指すべきである。

まず、オランダ農業の状況を大雑把に紹介する。

もともとオランダには大規模な干拓地があり、そこは酪農用の放牧地や飼料作物栽培地として利用されていた。

そして近年の動きとして、大規模なハウスを建設して、そこでトマトやパプリカなどを栽培する農家が出てきた。こうした作物の栽培は、ハウスなどの施設建設に投資しても、栽培効率が上がることでさらに利益が増えるので、農家はどんどん投資し、施設がどんどん大規模化・効率化してきた。

一方で酪農は競争力を失っており、酪農用だった干拓地の土地を、規模拡大を目指す野菜農家が買い取って、施設野菜の規模がどんどん拡大している、というのが現況である。

このことから日本が学ぶべきことは2つある。というより、2つしかない。

1つは土地の流動化を進めること、もう1つは農家に融資する金融機関を育てることである。たったこの2つのことが解決すれば、日本の農業は間違いなく大規模化、効率化する。ところがこれを実現することが非常に困難なのだ。

オランダでは前述した通り、規模を拡大したい農家が他人の農地を買っている。農地の市場が成立しているから、こういうことができる。家の近くに土地がなければ、遠く離れた場所に土地を買い求め、移転している。また相続税が高いため、親が子供に農地を引き継ぐ時にも、子供は銀行でローンを組んで親から土地を買うのだそうだ。相続するより買い取る方が安くつくらしい。こうして親子間の継承でも土地の売買が生まれている。

日本でも競争力を失っている水田所有者が、高付加価値化できる施設園芸農家に土地を売れば、オランダと同じようなことを起こすことができる。しかし、日本は水田を保有することに対するメリットが多くデメリットが少ない。そのため農家は農地を手放さず、競争力を持たない農家から他品目の農家へ土地が売買されるケースが少ないのだ。

これを解決するのは難しいだろう。しかし例えば宮崎平野では、実際に水田から園芸施設への転換が進んでいる。宮崎は米の競争力が低く、野菜の競争力が高いので、市場の力で転換が進んでいるのだ。他地域でも制度設計をしっかりすれば、農地の土地利用を流動化させることは可能であろう。

金融については、本当に大規模化したい農家が増えれば、都市銀行は対応すると思われる。先日みずほフィナンシャルグループの株主総会に出席したが、そこで佐藤フィナンシャルグループ社長自らが、農業向けの融資は増やすと明言された。都銀は政府のいうことは聞くので、政府の方針さえぶれなければ、金融の問題は解決するだろう。

また資金面でいえば、資金力を持った企業を農業に参入させるべきかということは、オランダに見習うとすれば関係ないことだ。オランダも大規模な個人経営の農家が、自力あるいは共同で融資を受けている。最初から資金力を持った企業を参入させる必然性はない。

実際にオランダ農業を見た印象としては、日本も同じような成長ができないことはないと感じた。私だけでなく、同行した農協関係者も同じ印象を持ったそうだ。そのためにも、ここで挙げた2点が解決されることを期待したい。

前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師

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