なぜ我々はサッカー日本代表に「曖昧な期待」を抱いていたのか --- 後藤 身延

2014年07月31日 08:49

サッカーのワールドカップがドイツの圧倒的な力を示した形で終わりました。日本代表は予選リーグで1勝もできずに敗退という残念な結果でした。

ドイツの優勝、ベスト4になった国、そして、日本代表の成績をみると、概ね世界各国の代表の実力通りの結果だったように思います。確かに中には、実力或いは前評判以上の戦いをした国もありましたし、逆に力を発揮できなかった国もあるようですが、これがサッカーの世界の現実、実勢だったと思います。

さて、このような世界の中で日本代表の戦いぶりはどういうことだったのでしょうか。予選リーグ突破どころか、1勝も出来ず、退場で10人で堅守したギリシャに引き分けた勝ち点1がやっとでした。


FIFAランキングで言えば、予選リーグの相手国の中で一番下位ですので、実力通りという結果だったのかもしれませんが、日本サポーターとしては、もう少し良い戦いが出来たのではないかという思いがあります。一部の選手のW杯前の発言、サポーター的な日本のサッカー解説者の前評価、欧州リーグのチームに所属する選手層を考えるともう少し善戦してもよいように感じがします。

しかし、客観的にみれば、昨年ブラジルで開催されたFIFAコンフェデレーションズカップ2013の試合や今回の結果からは、期待先行だったということが言えると思います。「自分たちの力を100%、120%出せば、予選リーグを突破し、ベスト8、ベスト4以上にいけるのではないか」。そんな期待感を選手、監督、スタッフ、サポーターそれぞれの形であったような感じです。

確かにネガティブではなくポジティブな精神は勝ち上がるために重要なこととは思いますが、客観的且つ冷静な情勢判断のない期待感は、根拠なき淡い期待感であり、決して良い結果を生み出すものではありません。

では、この日本代表への期待感はどこから生まれたのか。すこし前の日本代表は得点が出来ないチーム、FWの決定力不足と言われていました。

しかし、前回のW杯以降はFWの決定力不足をチーム全体で決定的な得点シーンを増やすことで得点できるチームに変えてきたように思います。そして、欧州リーグに在籍し、活躍する選手が多くなり、以前よりも世界で通用する選手層が厚くなったことが、なんとなく、W杯で善戦できるという期待感になったように思います。

この期待感に対して日本代表のチームとしての力はそれに伴ったものだったでしょうか。得点力不足を補うために、ディフェンスとフォワードの距離、選手間の距離を狭め、細かいパスをスピーディに展開することで、得点シーンを増やすというのが日本の攻撃の形です。しかし、この形は同時に守備面では脆い部分が出てくることになります。

これをやはりチーム全体でコントロールすることで補うというのが、日本の攻守の形であると思います。試合の結果や監督の選手起用、フォーメーションの変遷をみると、その形が完成形になる前にW杯を迎えたと思います。個々の選手の力がチームとして目指す形に届かなかったと言えばそれまでですが、チーム全体としては、試合の結果を顧みると自身のチーム力を客観的に判断、分析することが不足していたように思われます。個々の選手、監督、スタッフ、日本サッカー界の首脳陣のチーム全体の力の自己分析が不十分だったのではないでしょうか。

孫子の兵法に「己を知り、敵を知れば百戦負けなし」という言葉があります。日本サッカーは自己の戦力分析が出来ていたのかどうか。そして、世界のサッカーと比べて客観的な視点で自身の実力を推し量り、それに見合った中長期的な戦略或いはW杯における戦略があったのかどうか。

サッカー、スポーツと言えども戦いであるのだから、自己の分析、敵の分析、そして戦略なくしては勝てないのではないでしょうか。どんな戦術、フォーメーション、プレイスタイルを決めるにしても、基本的な方向性、戦略に基づいて考えることが必要であると思います。

近年、日本はW杯に連続して出場していますが、サッカー世界の歴史で考えるなら新興国であることは否めません。その事を考えるなら、冷静な分析をもって、謙虚に自らの戦略、戦術を思索すべきであり、その戦略、戦術を監督、選手、スタッフなどのすべての関係者が共有してはじめて自分たちの力が発揮できるのではないでしょうか。

今回で言えば、日本の実力は予選リーグをどのように勝ち上がり、本選トーナメントで何ができるかというレベルだったと思います。ならば、予選リーグでは負けない戦略、勝ち点を引き分けの1点でも良いから積み上げる戦略をもって、各試合の作戦、試合の展開、状況に応じた戦術、戦い方があったのではないかと思います。

予選リーグの初戦、先取点をとりながら、その後の対応が選手間で共有できなかったこと。後半、ベテラン選手の登場で更に自分たちの良い形ができなくなったこと。ギリシャ戦では10人になった敵の堅守を崩せなかったこと。それらをみると戦略の共有やあらゆる状況の想定、分析、対応が選手間で共有されていなかったのではないかと感じます。

曖昧な期待感で客観的且つ冷静な分析による判断を怠り、基本的な戦略が描ききれない中での小手先の戦術論、作戦は局地的な成功があったとしても最終的な目標に達しないことは、日本の歴史の中に見られることです。たかがサッカーとは言え、世界の国々がしのぎを削る戦いの場です。そのことを真摯に受け止め、歴史を振り返り戦略を立てることの必要性を感じると共に、今の日本の国家戦略にも通じるものがあるのではないでしょうか。
 
後藤 身延

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