「ふるさと納税」には大きな可能性がある --- 西村 健

アゴラ

「ふるさと納税」が流行している。人々が地方自治体へ寄付をすることで、その地域の特産物などをもらえるというメリットがある。特設サイトなど開設し、その魅力的な特産物で多くの納税額を集めている自治体も出てきた。インターネット上では各自治体の特典を比較するサイト、応援するサイトなどがオープンするなど活況を呈している。

また、気軽にできる節税策としても話題を集めている。自分が納めた所得税と住民税のうち結構な割合が戻ってくるので、少ない投資でカニや米などの名産物がゲットできるようだ。


ふるさと納税は2012年度で649億円が納税された。好きな自治体のためにもなり、自分も得をするという意味で素晴らしい試みである。自治体も特産物のラインナップに力を入れたり、SNSを活用するなど広報公聴に力を入れている。

しかし、このように拡大を続ける「ふるさと納税」、その目的と目的達成のための工夫を創造すべき時にきているのではないか。

ふるさと納税事業について総括している自治体の事務事業評価結果を見てみると、多くの記述がされている。特に、今後の方向性の欄について「WEBで申し込めるようにしたい」、「観光・宿泊施設の優待券などの組み込んでいる自治体もあるので検討したい」との現場職員の生の声が並ぶ。

ではふるさと納税事業の目的を見てみるとどういった記述になっているか。目的は「市出身者や市に愛着を持つ人が寄付をする」という記述になっていることが多い。はたして、それだけでよいのか。

特産物を知ってもらう。自治体の名前を認知してもらう、特産品のファンになってもらう、市に愛着を持ってもらう。そして、いつか観光したいと思ってもらう。こういった様々な目的が想定されるはずだ。たんなる寄付して終わりでは、一過性で発展性がない。職員が数百時間も業務に携わっているにも関わらずもったいなさすぎると思う。

そして、いかに工夫をするかも自治体職員のアイデアの見せどころだ。今後、納税者とのその後の関係構築をどうしていくかを考えてみるとたくさんのアイデアが浮かぶだろう。納税後も何かの機会に訪問してもらう、何かの機会に協力してもらう、常に頭において関心をもってもらう等々。

単なる納税で終わるのではなく、その後の「ファンづくりのきっかけ」にするなどとても可能性を持っている。お世話になった友人がいる、親が出身である、親族が出身である、祖父の出身地である、活躍したスポーツの大会の競技場がある、思い出の場所がある、好きな芸能人の出身地だ、2年住んだことがある、自然が大好きだ、好きな景色がある、好きなまちに何か協力したい等々、こうした何かの縁を考えて、縁をもとに、どのようにコミュニケーションを取っていくのか。コミュニケーション技術の進歩で継続した関係を構築しやすい今、様々な方法を模索してもらいたい。

寄付してくれた人に適切なタイミングでアプローチし、コミュニケーションを継続していくと、政策として広がりが見えてくる。ある納税者が、ふるさと納税でもらった商品に感銘し別荘を買いたいと思ってしまうなんてことがあるかもしれない。だからこそ、自治体側には、ふるさと納税の理由は何か? どうして行為をするのか? どうしたらもっと寄付したいか? 今度どういった関係を保っていきたいか? などインタビューやアンケート分析で洞察し、改善を図っていくことが望ましいだろう。

自治体側が気づいていない、寄付する側も気づいていない理由が明らかになるかもしれない。そこを見極めた上でふるさと納税をきかっけにしたコミュニケーションをデザインし、継続した関係を構築することを真剣に考えてみてはどうか。そのことを考えることが結果的にふるさと納税を増やす近道かもしれない。

西村 健
日本公共利益研究所 代表