朝日新聞は慰安婦問題の本質を直視せよ

2014年08月06日 00:22

朝日新聞の慰安婦特集はまだ初日の記事しか出ていないが、どうも「吉田清治の記事以外はすべて当社が正しい」といいたいようだ。特にあきれるのは「慰安婦問題の本質 直視を」と題する杉浦信之編集担当役員の署名記事である。彼は自社の「不正確な報道」を認めた上で、こう書く。

被害者を「売春婦」などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする一部の論調が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っているからです。見たくない過去から目を背け、感情的対立をあおる内向きの言論が広がっていることを危惧します。

戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

慰安婦は売春婦である。戦前は売春は合法であり、多かれ少なかれ「性の相手を強いられた」のだ。それは吉原の歴史を見ればわかる。朝日新聞は「軍が強制連行した」という証拠が出せなかったから「女性としての尊厳」に問題をすり替えているのだ。

問題の本質は女性の人権といった一般論ではなく、公権力による強制の有無である。民間の商行為に政府が謝罪する理由はない。この点で特に問題なのは、1992年1月の植村隆記者の記事だ。きのうの記事ではごまかしているが、植村記者の「解説」はこうなっている。

一九三〇年代、中国で日本軍兵士による強姦事件が多発したため、反日感情を抑えるのと性病を防ぐために慰安所を設けた。元軍人や軍医などの証言によると、開設当初から約八割は朝鮮人女性だったといわれる。太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した

「当時は研究が乏しかったので挺身隊と慰安婦を同一視した」という言い訳には驚いた。私は当時、植村記者と同時に取材したが、女子挺身隊は女性を工場に動員する組織であり、娼婦が含まれるはずがない。こんなことは「研究」するまでもない常識だ。

ここで朝日が「挺身隊の名で強制連行」という言葉を使ったことが問題を混乱させ、その直後に宮沢首相が訪韓して謝罪したために、強制連行が既成事実になったのだ。今ごろ「訪韓の直前をねらったわけではない」などと言い訳しても、小保方氏ほども信用されない。

「軍関与示す資料」については、原文を読めば「慰安婦を誘拐するな」という業者に対する監督の文書であることは明らかだ。だからこれは秘密でも何でもなく、防衛研究所の図書館で公開されていた。

さらに唖然とするのは、「他社の報道は」という記事だ。「吉田証言は他社も取り上げた」という。しかし読売も産経も、のちに吉田の「慰安婦狩り」が架空だったことを認めた。朝日のように、いまだに「強制連行は本質ではない」などと言い張ってはいない。

最終的な結論は6日付の記事を見ないと何ともいえないが、きのうの朝刊を読むかぎり、本筋ではない吉田証言だけ誤報を認め、政治的責任を問われている1992年の記事を守ったという印象が強い。好意的にみて最初は誤報だったとしても、これが河野談話で日韓問題になったあとも訂正せず、くり返し「強制連行」を糾弾した朝日の責任はまぬがれない。

慰安婦問題の本質は「日本政府は韓国に対する戦争犯罪を永久に謝罪しなければならない」という朝日の錯覚にある。第2次大戦当時の朝鮮半島は日本の領土であり、戦争犯罪をおかすことはできない。旧植民地に謝罪した宗主国はなく、日韓条約でも謝罪はしていないのだ。

歴史に無知な記者が、こういう問題をごちゃごちゃにして「アジアへの責任」を語ることが、中韓が図に乗って「歴史問題」を蒸し返す原因だ。日本政府が韓国に対して謝罪する理由はどこにもない。朝日の記者が歴史を勉強して問題の本質を直視することが出発点だ。いまだに役員が開き直っているようでは、大きく傷ついたブランドイメージは回復できない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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