サイバーエージェント藤田晋氏「退職者に激怒」で感じた危なっかしさ

2014年10月02日 10:08

昨日、東銀座の文明堂カフェでクリームあんみつを食べていた時のことである。ソーシャルメディアで日経電子版でのサイバーエージェント藤田晋社長の経営者ブログが話題になっていた。


この記事だ
私が退職希望者に「激怒」した理由(藤田晋氏)
http://mx.nikkei.com/?4_107405_466150_3

できれば原文を読んでもらいたいが、要するに若手社員が退職する、と。しかも、かつて損害を与えた上、敗者復活的にプロジェクトを任せた社員が競合他社に移籍する、と。「社長が怒っている」という噂が社内に拡散するよう、意図的に怒った、と。

なるほど。

記事を読んで感じたことは、サイバーエージェントは、藤田晋氏は「危なっかしい」ということである。私がアラサーで意識の高い社会人だった頃は、ヒーローだったのだけどな。

サイバーエージェントのビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」だ。

しかし、元々のエントリーをみる限り、「昭和」の会社そのものではないか。もちろん、サイバーエージェントは人材に対して熱い企業であるのだけれど。

一部は他の方と言っていることとかぶると思うのだが(これに関する議論は追いきれていない・・・)、私は、次の5点が論点だと考えている。

1.従業員にだって辞める自由はある。
2.企業に損害を与え、新規プロジェクトを放棄し、競合に転職してしまうような組織・人事マネジメントを反省すべし。
3.従業員が一人辞めたくらいで騒ぐ企業は東証一部上場企業としては、危うい。
4.実は、問題社員は退職する彼の上長では?
5.怒ると叱るは違う。

「わざわざ日経電子版に書くことか」という批判も見かけたが、まあ、それは本人の勝手といえば勝手だし、藤田氏と日経の品格が問われることなので、ここではスルーしよう。



この箇条書きで言いたいことはほぼ伝わると思うのだが、要するにこれは人材マネジメントの問題だ。同社は曽山哲人氏の書籍などで、ユニークな人材マネジメントを行っていることで知られているが、「仕組み」はあっても「運用」が上手くいっていないのではと思った次第だ。

なんせ、この社員への(匿名だが)個人攻撃、それを全社への警鐘にしようとしている時点で危うい。彼への(事実上の)個人攻撃ではなく、そもそもその直属の上司(プロジェクトを任せていたということだが、担当部長、役員くらいはいるはずだ)のマネジメントの問題ではないだろうか。

また、「怒る」という言葉が出ていることに危うさを感じた次第だ。というのも、経営者や、管理職は(実際は使っている人はいるが)「怒る」と「叱る」の違いを意識しなければならないのだ。この場合、「怒る」ということで、組織に警鐘を鳴らしたかったのだろうが、「叱る」という機能する指導をしなければならない。「怒る」という言葉を安易に使ってはいけない。

そもそも、人が一人抜けるくらいで大騒ぎする企業は組織として危ないのである。

リクルートという幻想 (中公新書ラクレ)
常見 陽平
中央公論新社
2014-09-09



拙著でもふれたことだが・・・。私は「人材輩出企業」と言われるリクルートの出身だ。本書では、「人材輩出」ではなく「排出」「流出」の要素もあることを指摘した。

しかし、この本を書き上げ、その反響や、これをキッカケに、nanapiの古川健介社長と元リク対談をして気づいたのだが・・・。

排出、流出をヨシとすることこそが、企業としての強さであり、余裕なのではないかと思ったのだ。

社長が会社に警鐘を鳴らし、そのことをメディアで発信することは勝手なのだが、余裕がないな、危ういなと思った次第である。

東証一部上場企業は、社員の、いや役員クラスですら、その退職や、流出で傾かないくらいの強さが必要なのだ。

このたび、東証一部に上場するリクルートは、人材輩出企業であり、排出企業、流出企業である。

排出・流出ぶりに胸を痛めたこともあったが、いま思うと、それこそが強さである。何人ものエース社員、カリスマ社員が辞めた。なんせ、最強の元リクは創業者の江副浩正氏である。リクルート事件の関係などもあり、28年社長を勤めた上で退いたわけだが、それでも会社は続いた。

最近のリクルートの若手社員、それだけなくまだ残っている社員と会うと、時に、その半端ない小物感、サラリーマンっぷりにびっくりする。ただ、それでも1兆円企業であること。この仕組みづくり、マネジメントこそ強さだと感じた次第である。

ところで、藤田社長はいつまで社長を続けるのだろうか。まあ、しばらくはやめられないだろう。

ぜひ「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを忘れずに邁進して頂きたい。

曽山さん、元気かな。久々に会いたくなった。

追記(2日10時27分)
友人から
「損失出してセカンドチャンスもらってそれを袖にして競合に行くんだから、サイバーは追加損失リスクを損切りできて競合他社に負わすことができたから対競合としてはいいんじゃないですかね?っていう発想はNGでしょうか?」
というコメントをもらった。
そう、これも人材マネジメント視点。
で、こんな社員採ってたんだということを認知されないためには、やっぱり日経で書くべきことではなかったか?

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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