原発を「止めるルール」の明確化を

2014年10月26日 12:04

感染症の検査施設が「住民の同意」が得られないために稼働できない問題は、他にも類例がたくさんある。最近は老人ホームや障害者施設、果ては保育所まで「うるさい」という理由で周辺住民が反対して建てられないという。


建てられないのはまだいいが、BSL-4施設のように存在している施設が稼働できないのが原発だ。何度も書いたように、現状には法的根拠がない。原子炉等規制法にはバックフィットの規定があるが、原発の運転を止めるものではない。政府答弁書に書かれているように、原子力規制委員会に「発電用原子炉の再稼働を認可する規定はない」からだ。

だから電力会社が規制委員会に定期検査を終了するという申請を出し、委員会がそれを承認すれば、原発は適法に運転できる。日本原電でもめている活断層の問題も、再稼動とは無関係だ。電力会社が行政訴訟を起こせば、簡単に勝てる――そういっても、電力会社は「住民の同意が得られない」という。

これが本質的な問題である。規制委員会がOKを出した川内原発でも、住民同意の手続きに時間がかかり、再稼動は年明けになりそうだ。これも違法であり、原発の運転に住民同意は必要ない(知事の同意が必要なのは立地のときだけ)。

安全基準が改正されたときは、運転しながら設備を改善するのが当然である。定期検査の終わった発電所の運転を再開するのは自明だから、法に規定がない。ところが規制委員会は、運転再開の手続きを田中私案と称する3ページのメモで決めている。

新たな規制の導入の際には、基準への適合を求めるまでに一定の施行期間を置くのを基本とする。ただし、規制の基準の内容が決まってから施行までが短期間である場合は、規制の基準を満たしているかどうかの判断を、事業者が次に施設の運転を開始するまでに行うこととする。(施設が継続的に運転を行っている場合は、定期点検[ママ]に入った段階で求める。)

ここでは通常の安全基準のように、それを実施するまでの施行期間(猶予)を置くことが基本とされているが、なぜか猶予が「短期間である場合には」新基準を実施するまで運転を認めないことになっている。これは田中委員長が個人的に決めたメモであり、委員会決定にも規則にもなっていないので、法的拘束力はない。

さらに規制委員会がOKを出しても、住民同意というハードルがある。すべての原発の安全審査が終わって住民同意が得られるのを待っていたら、10年はかかるだろう。その間ずっと高価なLNGを輸入し続けたら、日本経済は回復不可能なダメージを受ける。

だから原発を正常化するには、それを止めるルールの明確化が必要だ。今は何の根拠もなく「空気」で止まっているので、運転再開もどうやっていいかわからない。だから田中私案のようなメモではなく、委員会規則で原発の運転停止命令の根拠を明確にし、その解除の条件も具体的に規定すべきだ。

今でも書類審査(保安規定)だけは運転開始の条件になっているが、たとえば配管の補強などの短期間にできるバックフィットは(例外的に)運転開始の条件に加えてもいいだろう。住民の理解も必要だが、運転再開の条件ではないので、公聴会の回数に上限を設けるなど制限すべきだ。法律が住民感情に合わない場合には、法律を改正するのが法治国家というものである。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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