どこかの中学校で卵を2メートルの高さから落としても割れないものを段ボールとテープで制作せよ、という課題に取り組んでいるのがテレビで取り上げれていました。数名のグループに分かれてあれやこれやと思考しています。先生のヒントは落下速度を遅くするか、落下時の衝撃を少なくせよ、というものでした。
結果は約三分の二が成功、次に上位7チーが五メートルの高さに挑戦し、卵は一つも割れませんでした。
実に面白そうな、そして考えることを身につけさせる教育だと思います。
今、塾の現場にちょっとだけ変化が出てきています。それは理科実験。塾で? そうです、考える力をつけるという意味で実におもしろい試みだと思います。私はこの塾に3Dプリンターを導入してこれを徹底的に使い込んで教育してみたらどうでしょう、と勧めています。誰もやったことのない、だけどみんな触りたいものをいち早く導入することに意味があります。
最近若い人と話をすると割と単刀直入、直球一本勝負のやり取りが多く見受けられます。「どんな本を読んだらよいでしょう」(何の為でしょうね?)「どうやったら起業できますか?」(そんなの、分かりません)「投資をやりたいのですが、どうやったら儲かりますか?」(こちらが聞きたいです)などなど。とは言っても私も実は20代の時、野村證券の田淵節也会長(当時)にある時、「どうやったら株は儲かるのでしょう?」とストレートを投げたことがあります。答えは「今の株はコンピューターが動かすからわしもわからん」とかわされましたが。
富士フィルムの古森重隆氏が日経ビジネスのコラムに似たようなことを書かれています。
「若い人は皆、「答え」を外に求めている。書店に行けばノウハウ本が平積みになっている。取材を受けても「どうすれば勝てるのか」という事ばかり。ビジネスのスピードが上がっているからなのだろうが、世の中全体が安易に外に答えを求めすぎているように感じる」と述べています。
効率化やレバレッジは10年ぐらい前に一種の流行となりました。いや、今でも私は効率、レバレッジは大切な経営手法として活用しています。しかし、それにとらわれ過ぎると忘れてきてしまうものもあるのです。それは例えば従業員であります。経営者は経営という果てしない競争の中で効率と新しいマーケットを追求し、利益の少ない事業部門を切り、成長性のある分野を生かしていきます。これは残念ながら現代経営の中ではやむを得ない選択肢であります。
しかし、従業員がもしかしたら永遠に不滅の安定した職を求めているのだとしたらここにあまりにも大きなギャップが存在してしまいます。つまり、経営には効率化、レバレッジだよ、という指導を完全に信じきってそのスタイルを爆走すれば大きなものを忘れてきたことに気がつくでしょう。
経営者であっても常に様々な角度からものを考え、あらゆる条件を当てはめ、その解を求めていきます。つまり、全てのシチュエーションに共通の解はなく、あらゆる答えが存在するのであります。まさに答えは一つではないの世界です。
古森氏は「学びと実践を通して教養と実力を高めるしかない」と述べています。つまり、現場と学問の両建てを指摘しているのではないかと思います。私は強くその考えに賛同します。アメリカではMBAなどを通じて理論を学びます。それさえ知れば、どんな会社の経営もできるというのがふれこみであります。それゆえにアメリカのCEOが異業種から頻繁に招かれるのであります。
一方、日本は現場たたき上げが高く評価される傾向があります。つまり、経営のスタイルに両極端な違いがあると言っても過言ではないでしょう。
ならば、古森氏の指摘するように両建ては大変強いものになります。そのためには我々は仕事時間を2割削ってでも論理を勉強すべきであります。そしてその論理とは冒頭に述べたように「ハウツー本」で得る知識ではなく、間接的な勉強かも知れないし、業務とは全く関係ないことかもしれない、とにかく、自分に刺激を与え続けることが重要ではないかと考えています。
その一つとして私が日本で「コミュニケーション塾」に講師陣として名を連ねさせていただいているのは人との接点の中に刺激があると考えるからなのです。異業種、全く違う世界に生きる人たちとテーブルを囲んで議論する、ここに「ハッとする」気づきが生まれるかもしれないのです。次回のコミュニケーション塾は11月6日で元ソニー生命の橋本眞史氏です。彼は非常に博学で且つ、アウトプットが上手な方なので、私もかなり期待しています。
自己啓発という観点からすれば世の中変化球だらけ。だからそれをしっかり受け止められるような広い範囲の「想定」を作り、「想定外」が出にくくすることが大事なのではないでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年11月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。