GDP速報値マイナス1.6%の衝撃 --- 岡本 裕明

2014年11月17日 10:35

11月17日午前8時50分は安倍首相をはじめ、多くの官僚、そして市場関係者、経営者にとって大きな意味をもたらしました。内閣府のサイトを通じて発表される7-9月のGDPの第一次速報値が出たからであります。そしてその数字は安倍政権にとっての期末試験でもあり、解散前の卒業試験かもしれないし、消費税の行方を占う極めて重要なタイミングでもあります。


発表された実質年率マイナス1.6%という7-9月GDPの衝撃をどう捉えるか、私は一週間ぐらい前に漏れ伝え聞いた数字が2%とこのブログに書かせていただきましたし、専門家の事前予想も2.0%でありましたのでこれほど悪化しているとは正に驚愕であります。個人消費回復が遅れていること、これが主因のようです。

GDPのこの数年の動きを見てみましょう。

2008年マイナス3.7%、09年マイナス2.0%、10年プラス3.4%、11年プラス0.3%、12年プラス0.7%、13年プラス2.3%、そして14年に入ると1-3月がプラス6.0%、4-6月がマイナス7.1%となっています。

リーマンショックの2008年を経て09年後半から回復に向かい欧州危機や民主党政権末期に低迷するという大きな流れがあったのですが、直近を見ると消費税上げ前の駆け込み需要、そして想定以上の反落となりました。政府は2-3か月前までは7-9月は大幅に反発するとみており期待値は4-5%程度のプラスだったと認識しています。今回、その期待値に全然届かなかったことが解散総選挙へ踏み込まざるを得ない安倍首相の苦しさとも言えそうです。

同じことはバズーカ砲第二弾を放った日銀にも言えました。インフレ率が目標に達していないという衝撃的な内部数字が黒田総裁の心を動かしたことは既に公開された記事となっています。そういう意味ではアベノミクス第一の矢で強気一辺倒の安倍、黒田両名がいやおうなしにその軌道修正をせざるを得なかったこのシナリオは重要な意味を持ちそうです。

安倍首相は野党からのアベノミクスの失敗論に対して雇用改善、賃金上昇があったことを反論の根拠としています。私なら株価が想定以上に上がったこと、オリンピック誘致効果と円安もあり、訪日外国人が増えたこと、それにより一部の小売店では売り上げ増につながっていること、外国人労働者も知らぬ間にあちらこちらで増えており、雇用が環境が厳しい一部の業界には大きな助けになっていること、それと国民に期待と明るい展望を持たせてくれたことを挙げましょう。

アベノミクスが失敗だったとするのは早計であります。なぜなら第三の矢はまだきちんと飛んでいないのですが、この構造改革が最も重要な意味を持つからであります。但し、以前にも指摘したように政治家生命、特に首相というトップの在任期間は平均1年程度というのが戦前、戦後を通じた流れでありますからアメリカの経営者が短期志向だと非難する日本人経営者が多い中、政治には短期的効果を求めるのか、という事になり、矛盾が生じるのであります。政治の改革、体質改善にはやはり多くの大統領制をとっている国々の任期である4-6年程度からそれ以上は必要であろうし、そうでなければ日銀の金融政策のような「モルヒネ」に頼らざるを得なくなります。他国と比較した場合、政権の不安定さの一方で長期の自民党時代が奇妙なバランスを作り上げたのが日本だとも言えましょう。

消費税再増税については1年半ほど先送りすることになるのでしょう。私は「なぜ引き上げを2度に分けたか」が今さらまた話題になっていることにややびっくりしています。一回で上げればよかったという声が経営者の声から「本音」として出てきているわけですが、これは結果論。5%の消費税を一気に10%に「倍増」することは物理的に不可能。他に残されていたのは1%ずつ、5年間かけてあげる方法があったはずですが「事務工数の問題」で話題にすら上がりませんでした。しかし、1%ずつというのは海外でたまに見かける衝撃が少ない割とスムーズな方法であることは確かであったのですが。

今日からマスコミは忙しくなるのでしょう。安倍首相も解散やむなし、と発表するのでしょう。首相の心が休まる時は当分なさそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年11月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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