一国ケインズ主義の終焉

2014年12月31日 12:35

今年は「アベノミクス」が見事に失敗した年だった。マネタリーベースは276兆円と史上最大を記録したが、図のようにコアCPI上昇率は0.7%に下がった。「異次元緩和」で物価が上がったようにみえたのは、昨年後半の原油価格の上昇が原因であり、今年のCPI低下も原油価格の暴落が原因だ。

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コアCPI上昇率(左軸)とWTI原油価格(ドル/バレル)


コアCPIは原油価格からほぼ3ヶ月遅れでパラレルに動いているので、この図から類推すると、今の原油価格(50ドル台)が続くと、来年4月にはデフレになるだろう。物価指標に日銀のコントロールできないエネルギー価格を入れていることが、過剰な物価変動の原因になっているのだ。

黒田総裁の本当のねらいは円安にあったと思われるが、それによって貿易赤字は増えた。おまけにJBpressにも書いたように、せっかく原油安で交易条件が改善したのに、追加緩和によるドル高で止めてしまった。来年は、デフレとマイナス成長の年になるだろう。

各国の中央銀行が物価を自由にコントロールできる時代は終わった。ゼロ金利(長期停滞)は日本に固有の現象ではなく、リーマン・ショック後の一時的な現象でもない。グローバル資本主義が新興国に広がった結果、先進国内の利潤機会が失われたので、国内だけで経済政策を考えると行き詰まる。

つまり黒田氏の信じている一国ケインズ主義はもう終わったのだ。彼のオールドケインズ理論では、通貨供給で物価水準がコントロールでき、為替レートで経常収支がコントロールできることになっているが、グローバル化した世界では、こういうコントロールはきかなくなった。資本がネットワークで世界を移動し、海外投資で経常収支が動くからだ。

主権国家という概念ができたのは1648年のウェストファリア条約だが、それが国際的システムとして完成したのは第1次大戦後だった。マルクスとエンゲルスは1848年にグローバリゼーションを発見したが、それが全世界に広がったのは20世紀末からである。

OECD諸国の人口は12.5億人と、まだ世界の総人口の18%だ。世界の半分が資本主義になるとしても、グローバル化は今世紀いっぱいは続くだろう。それにどう対応するかは、まだ答のない問題である。目先の「景気対策」ばかり追いかけている安倍政権には、1年以上先のことは見えていないだろうが。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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