ヘッジファンドの本物と偽物

2015年01月06日 11:30

ヘッジファンドとは何か。実は、多くの場合、非常に漠然としたヘッジファンド的なものが意識されているだけである。しかし、ヘッジファンドという名称は、ヘッジという要件を表現しているはずである。では、ヘッジという概念は何を意味するのか。ヘッジは、やはり、リスクをヘッジするということであろう。


一般に、運用者の意図する投資機会の獲得は、その投資機会に固有の市場価格変動(リスク)を取り込むことと、切り離すことはできない。簡単な話、割安な株式に投資することは、同時に、株式市場全体の株価変動を受け入れることをも意味するのだ。

市場価格変動を避けて、つまり、リスクをヘッジしたうえで、意図した投資機会だけを純粋に取り出すことはできないか。ここに、ヘッジファンドの原点がある。リスクをヘッジするから、ヘッジファンドである。

その意味で、転換社債の裁定戦略などは、一番ヘッジファンドらしい。転換社債は、株式のコールオプションと社債との合成証券であるから、その理論価格は、コールオプションの理論算定価格と社債の理論算定価格との合計値となるべきである。しかし、実際価格は、理論価格と異なる場合が多い。この非効率こそが投資機会である。ヘッジファンドは、純粋に、その非効率だけをとりにいくものである。

そのためには、例えば、転換社債を取得(ロング)して、コールオプションの理論価値相当分の株式を空売り(ショート)すればよい。更に厳密を期すならば、転換社債の社債価値に内包する意図せざる信用リスクもヘッジしないといけない。これには、クレジットデリバティブを使ったヘッジを行うことになるであろう。

かくして、転換社債裁定戦略の場合、転換社債のロング、株式とクレジットデリバティブのショートという組み合わせが、一つの典型的な取引形態となる。ここには、ヘッジファンドに共通する手法、即ち、市場の非効率という投資の機会の獲得と、その非効率をとりにいく際の市場リスクの厳密なヘッジが、よくあらわれている。

市場リスクを厳密にヘッジして価格の非効率をとらえること、これにヘッジファンド戦略は帰着する。この原則を厳格に守りさえすれば、その他のこと、即ち、投資対象なヘッジ手法などは、運用者の考えで自由にすればいいのである。その自由さもヘッジファンドの特色である。

ところが、ヘッジファンドの運用者には、自由さが逸脱に堕しているものが多い。つまり、厳格に市場リスクをヘッジして価格の非効率のみを純粋にとらえるという原則を、守れないものが多いのだ。ヘッジファンドの問題とは、本物のヘッジファンドが少なくて、似非ヘッジファンドが多すぎることである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
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