一色正春さんの疑問に勝手にお答えしてみました

2015年02月19日 09:00

こんにちは!フリーでネットからテレビまで、様々なニュースを制作をしている渡辺龍太です。(@wr_ryota ryota7947 アットマーク gmail.com)

一色正春さんという、三年前に尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船が、中国の船に激突された映像をネットに公開して話題になった方が面白い記事を別冊正論に書かれていていました。


あの日を境に変わった私のメディア認識

この記事の中で、一色さんはご自身の体験を通じて、事実と報道の乖離が存在する事に気付いたとおっしゃっています。特にご自身の体験を踏まえて、尖閣問題においても、国民が本当に知る必要性がニュースを、報道機関は報道していないとおっしゃっています。

 漁船体当たり事件から6か月前の平成22年3月1日、中国は「中華人民共和国海島保護法」という法律を施行しました。一言でいえば「中国領土の住民のいない島は国が所有し、国務院が国を代表して所有権を行使する」という法律です。しかも中国は、平成4年に制定した「領海法」により尖閣諸島は中国領土であると定めています。つまり、中国はこの法律を施行することにより尖閣諸島全島を国有化したのです。この時、一部の新聞を除き、NHKをはじめとするメディアはこの事実を大きく報じることはありませんでした。

 ところが、平成24年に我が国が尖閣諸島全5島のうち3島を国有化(既に1島は国有地)したときは、どうだったでしょう。同年4月に東京都の石原慎太郎知事(当時)が購入を表明した時点から大騒ぎを始め、中国の国有化の際の報道とは比べ物にならないくらいの過熱報道でした。

 普通に考えれば、日本国内の土地を地方公共団体や国が買い取るという話と、他国が我が国の領土を勝手に国有化したという話では、後者の方を国民に広く正確に知らせるべき重要なニュースだと思うのですが、NHKをはじめとするメディアの認識は違うようです。

私に日本国民の一人として、一色さんの危惧は非常に良く分かります。確かに、日本のメディアなら、他国が自国の領土を勝手に国有化したという話の方が重要な扱いにするべきだという指摘はごもっともだと思います。しかし、ニュースの作り手として、ニュース制作現場では違う論理が働いたというのも非常に腑に落ちたりもします。というのも、一色さんがお気づきの様に、メディアのニュースの優先順位は、日本国民にとっての必要な情報かどうかという論理ではないからです。

非常に簡単にですが、テレビの情報の取捨選択の論理について書いてみます。テレビのニュースにおいて大切なのは、”刺激的な絵があるのか”という点です。テレビというのは、映像と音声によって成り立っているメディアです。テレビの視聴者はザッピングを行いながら、まるで遊牧民の様にテレビ各局のチャンネルを行ったり来たりしています。そして、遊牧民が草の豊富な土地に集まるように、テレビの視聴者は刺激的な映像が放送されているチャンネルに自然に集まってくるのです。

では、刺激的な映像とは何でしょうか。もちろん、これだけではありませんが、”誰かが感情をあらわにしている映像”というのは非常に視聴者の引きが強い映像の一つです。例えば、元兵庫県議の野々村竜太郎が大泣きしていた映像を見た事ある人は、「ああ、あの映像ね!」と割と鮮明に思い出せる人が多いとおもいます。野々村元議員の様に金銭的にトラブルのあった議員の釈明会見などは、過去にも非常に沢山行われてきました。しかし、野々村元議員ほどのインパクトを世間に残した人はいないと言っていいくらいです。

この様なニュースの優先順位のつけ方や制作の裏話は、次の本に詳しく書きましたので、もっと知りたい方はこちらがオススメです。



さて、この刺激的映像が重要だという視点を持って、一色さんが指摘する日中のニュースに注目してみましょう。中国で新たな法律が出来たという場合、どんな映像をテレビ局は扱う事が出来るのか考えてみましょう。もし、この法律について中国の報道官が記者会見が行われていれば、その映像が使えます。その他には、イメージ映像として中国軍の映像、あるいは、中国の議会や街の風景などの映像しか使えないかもしれません。街の声を取っても、特にピンと来る庶民もいないと思うので感情的な映像は撮れないはずです。そうなると、いくらナレーションで重要な事を言っていても、刺激の少ない映像を何分も流していては視聴者は番組から逃げて行ってしまうでしょう。

一方、怒りに満ちた石原慎太郎さんが、尖閣を国有化すると記者会見する映像はどうでしょうか。石原さん自身が既に感情的です。さらに、石原さんに怒鳴られた記者も、場合によっては感情的に石原さんに食ってかかります。あるいは、アンチ石原の議員や庶民の声など、刺激的な映像などは簡単に撮る事ができます。なのて、テレビ的には、こっちの方が圧倒的に扱う価値のあるニュースなのです。

世間は、ニュースは国民に重要な事を伝えるためにあると思っているかもしれません。しかし、私の持論なんですが、ニュース番組というのは”ウワサ話の延長にあるエンターテイメント”に過ぎないと思っています。その証拠に、ニュース番組がつまらなかったら視聴者は何をするかというと、他のチャンネルでバラエティーやドラマを見始めます。

自然災害が起きた時など、本当に何かを知る必要がある人がニュースを見ているのだったら、決してそうはなりません。何とかして、自分に必要な情報を手に入れようと努力するはずです。本当に重要な事をメディアを通じて知るには、メディアの流している情報の中から自分で本当に必要な情報を見つける目を鍛えるしかないのです。

※Facebookで「マスコミもう一つの読み方」というグループを作りました。そこにコメントを頂いたら、確実に返信いたします。

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渡辺 龍太
ニュースや情報番組などを中心に活動する放送作家

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